教育福島0212号(1998年(H10)07月)-030page

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図書館コーナー

ランガナタンの5法則

 

生涯学習や情報化が叫ばれる現代、図書館はその中核たるべき機関です。そこに働く専門性ある職員=司書が、自らの仕事のよりどころとして念頭におく様々な規範があります。「ユネスコ公共図書館宣言」「図書館の自由に関する宣言」「図書館員の倫理綱領」等々。「ランガナタンの5法則」もその一つ。インドの図書館学者ランガナタンが「図書館学の5法則」として一九三一年に発表しました。五十年以上も前のものですが、その精神は今でもりっぱに通用します。ただし、「本」は「資料・情報」、「読者」は「利用者」と言い換えたほうが、ご理解いただけると思います。

 

第1法則 本は利用するためのものである

(Books are for use)

「利用」の方法は貸出しや閲覧など、様々です。資料が仕舞いこまれて、誰も使えない、というのではなく、有効に活用していくことにこそ意義があります。勿論、大切に保存し、後世に伝えるという使命も忘れてはなりません。が、その場合も、後の「利用」に備えて保存すると考えられます。

 

第2法則 本はすべての人のためにある

(Books are for all あるいは Every reader, his book)

情報はあらゆる人々に対して開かれていることが必要です。性別や国籍、年齢、職業、財産などを理由に、不当に差別されてはなりません。情報にアクセスする権利を疎外する様々な障壁をなくし、情報格差を是正するための公的な仕組みが図書館です。図書館の有無は、知る権利という基本的人権が保障されているかいなかという問題であり、行政の責任は重大です。住民が声をあげていくことも大切ですが、自治体は住民の要望を先取りするくらいの姿勢を示すべきでしょう。

 

第3法則 すべての本をその読者に

(Every book, its reader)

資料・情報と人(利用者)を結びつけるのが、図書館の役目です。資料が、それを必要とする利用者に届く。これが肝心です。そのためには、使いやすい、便利な図書館であることが必要です。資料の配置や検索ツールの整備、知識・経験豊富な専門職員の存在、館外における活動、広報、他館とのネットワークなど、資料と人が出会うチャンスを少しでも多く造り出すための不断の努力が求められます。

 

第4法則 読者の時間を節約せよ

(Save the time of reader)

できるだけ素早く、求める情報に行き着くためには、あやふやな、いい加減な手法でいきあたりばったりの仕事、というわけにはいきません。単純な貸出し返却業務にも、こみいった調査相談にも秩序と方法が求められます。きちんと整理された資料に基づいた、的確な行動が無駄な労力を省き、時間を節約します。必要な手間隙はおしまずに、合理的な手段で、よりよい結果がもたらされるよう、心がけたいものです。

 

第5法則 図書館は成長する有機体である

(A library is a growing organization)

時代が経つにつれ、新聞や雑誌、視聴覚資料、ニューメディアなど、資料は多様化し、いまや図書館は図書だけではなく、広く情報を扱う場へとその認識が変化してきました。基本理念、根本的な役目はかわらないまでも、その役目を果たすにあたり、世の中の流れを見据え、その時代、地域に相応しいあり方を考えていかねばなりません。蔵書数や利用者数の増大といった規模の変化、資料や利用者の要求の多様化などの質的変化。図書館はこれらに対応し、サービスの後退をまねくことなく、進歩、発展の方向へ「成長」していくべきものです。建物さえできれば、分館の数がそろったから、最低限の本さえあれば。このような「ここまで達成されればこれでいい」という上限などないのです。常に、さらにその先、そのまた次の役割、責務が待っているのが、図書館です。それはあたかも成長しつづける有機体のような存在です。当然、組織としての図書館と同時に、個々の職員もまた経験の蓄積と研鑽による成長が不可欠なことは言うまでもありません。

 

以上、5法則の一解釈を挙げてみました。考えようによっては、図書館以外の分野にも応用できます。皆さまのお役に立つ点もあるのではないでしょうか。

 

 

 


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