教育福島0212号(1998年(H10)07月)-038page

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平成9年度養護教育研究実践

研修講座・研究論文

「肢体不自由児が主体的に取り組めるパソコンソフトの選定と活用実践事例」

−A子の絵画・工作活動へのパソコン活用−

県養護教育センター長期研究員 水井裕行

 

1) 主題設定の理由

今日の情報化社会の中で、インターネットを含むマルチメディア技術は急速に進歩し、職場はもちろんのこと、一般家庭にもパソコンが普及している。それに伴い学校教育においてもその活用と指導にせまられ、中学校の技術・家庭科では、情報基礎が必修となり、工業高校や商業高校等においては一人一台の時代となった。

養護学校においても、子供たちの社会参加・自立を考えると、パソコンを活用する能力を高めることは大切であると考える。また、パソコンは、情報の加工によるコミュニケーション支援や、外部入出力装置を利用した感覚の補助・代行等が可能であり、障害を補完し、学習の支援を行うことができる有効な教具であると考える。

特に肢体不自由養護学校では、いろいろな活動に取り組もうとするとき、「障害があるため思うようにできない」という子供が多い。パソコンは、外部入出力装置の工夫をすれば、ある程度自分で操作が可能になる。また、映像や音声の刺激もあり、子供の興味・関心を引きつけやすい。

しかし、パソコン活用の指導は、教員側にも、「パソコンは難しい」という意識と、学習内容や子供のニーズに合ったソフトの入手・選択が困難であるという理由からなかなか進んでいない。

そこで、手が不自由なために、絵画・文字による表現や工夫など消極的になりがちな子供に、パソコンを活用した授業実践を行い、意欲的に学習へ取り組む態度を育てるとともに、子供の実態に応じたソフトを手軽に選択・入手する手立てが分かれば、パソコンを活用した教育は容易になり、子供の学習に対する興味・関心はより一層高まるものと考えて本テーマを設定した。

2) 研究仮説

上肢に軽いまひがあり、絵画制作・文字表現・工作活動等に消極的なA子に、パソコンの入出力装置の工夫と、A子が興味・関心を示すソフトを使って指導すれば、絵画や工作にも楽しく主体的に取り組めるようになるであろう。

また、ソフトを選定する段階において、安価で入手が容易な方法を示せれば、養護教育でもパソコンが有効に活用されるであろう。

1 対象児の実態

小学部三学年 女児

障害名 脳性まひ

田中ビネー知能検査 IQ七五

(平成八年二月実施)

移動方法 車いす

ひらがな・カタカナ及び、自分の名前や曜日など日常生活で使う漢字の読み書きができる。上肢に軽いまひがあり、手首や腕を、大きく曲げたり、動かしたりすることが困難である。図1はA子が描いた人物である。四つ切りの画用紙に手を置き、手首が動く範囲に描いている。また、正確に紙を折ったり、はさみを使って切ったりする活動が難しい。

2 仮説設定の理由

A子は、上肢の軽いまひのため、

 

図1 A子が描いた人

 

図1 A子が描いた人

 

 

 


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