教育福島0214号(1998年(H10)07月)-009page
図1 特定の能力の習得と困難の例示
(養護教育課作成)
ような機能障害によるものなのかについては、現段階では、まだ医学的に十分明らかにされているとはいえません。しかし、学習障害児が示す学習上のつまずきや困難、行動上の問題などから、脳の微細な機能障害によるのではないかと考えられています。
4 年齢範囲について
学習障害は個人に内在するものであり、その状態が顕在化するのは、学齢期に多く見受けられますが、中には幼児期や青年期に現れる場合もあります。
5 他の障害との重複について
学習障害の状態像として、視覚障害等の他の障害から二次的に生じている学習上の困難を学習障害の範疇から除外するとともに、他の障害の状態と学習障害の状態とが重複して生じる可能性があることを示しています。
特に知的障害との重複が問題となります。この点については、知的障害が直接の原因となるものは学習障害には含まれませんが、学習障害の状態と知的障害の状態が併存する場合はあり得ると考えられます。このため、定義では、知的発達との関係に関する記述において、「基本的には」という文言を用いて、このような趣旨を表現しています。
6 行動上の諸問題について
学習障害に伴って、注意欠陥や多動などの行動上の問題や手足の動きの不自然さなども、時には見られることもあることを示しています。
二 学習障害の実態把握
1 実態把握の目的
学習障害の実態把握においては、単に子供の実態を把握することだけでなく、それに続く具体的な教育的対応、つまり、認知の特性についての情報や、指導計画の作成及び指導の展開のための活用など、学習上のつまずきや困難の改善という指導上の手がかりを得ることが本来の目的といえます。
また、他の障害から二次的に生じる学習上の困難を含まず、養育上の問題や家庭環境などの環境的な要因によるものではないとされていることから、個々の子供の他の障害の状態や環境的な問題等について十分に情報を収集し、これらが原因となる特定の能力の習得と使用の著しい困難を学習障害とすることのないよう、十分な実態把握を行って、これらの結果を慎重にかつ総合的に判断することが大切です。そのためにも、学習障害の実態把握に当たっては、教育相談機関や教育研究機関との連携によるチームアプローチが重要となります。
2 実態把握の主な方法
1) 生育歴や行動などに見られる特徴
2) 学校や家庭における生活の様子の把握
3) 各教科の学習や学習活動全般の評価
4) 個別式知能検査・標準学力検査及び各種の認知能力検査の実施
5) 養育上の問題や家庭環境などの環境的問題点についての把握
6) 必要に応じた医学的な諸検査の実施
3 実態把握の留意点
実態把握における情報収集に当たっては、本人及び保護者の理解と協力が不可欠であり、本人や保護者の気持ちに十分配慮し、信頼関係を築いていくことが重要になります。また、情報収集の結果得られた個人情報の取扱いについては、十分留意することが必要です。
三 学習障害児等に対する指導の基本的な考え方
1 「個に応じた指導」の一層の充実
子供一人一人の学習障害の状態等に応じた指導内容・方法を工夫することが大切であり、聞く、話す、読む、書く、計算することの困難などへの対応のほか、学習障害児等にしばしば見られる運動・動作の困難や行動上の問題への対応について配慮する必要があります。したがって、「個に応じた指導」を一層充実することが重要となり