教育福島0214号(1998年(H10)07月)-014page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

係や状況を理解したり判断したりする社会性に未熟さがあり、感情や行動をコントロールする力に弱さが見られました。

 

2 指導の概要と経過

(1) A君に対するかかわり

1) 子供の気持ちや行動を共感的に受けとめる

学級担任は、行動観察を通して、A君を理解することに努めました。A君の話を聞いたり一緒に遊んだりする時間をできる限り設けて、A君の気持ちや行動を共感的に受けとめ、学級担任との信頼関係を築くことをねらいとして接するとともに、不適応行動を起こさざるを得ない要因や背景を探ることに気を配りました。その結果、A君は、学級で孤立していることが明らかになり、言葉による表現が不得意なA君が、自分の苦しい気持ちを訴えようとして起こしている行動であると考えることができるようになりました。

しかし、A君の望ましくない行動に対しては、その場の状況と行動を確認しながら理解させ、A君自身の正しい判断へと導くことができるように指導しました。その際、他の子供たちにA君に対するマイナスのイメージを与えることのないように、指導の場に配慮しました。

2) 話す自信をもたせる

自分の感情を表現しよすとすると口ごもってしまい、相手に伝わりにくいために、結果として友達関係がうまくいかず、いらいらしたり、消極的になったりするなどの問題も見られたので、まず日常の簡単なあいさつが適切にできるよう、その習慣化を図る指導を続けました。その結果、次第にはっきりとした口調であいさつを交わすことができるようになり、話す自信がついてきました。

3)成就感、達成感を味わわせる

授業をA君のよさや努力を認める場としてとらえ、学習内容の理解や目標の達成、進歩、学習に取り組む態度を称賛し、自信をもたせることに留意しました。指導に当たっては、学習内容のスモールステップ化を図り、その習得のためにできる限り個別指導の時間を確保し、A君が成就感、達成感を味わうことができるように努めました。

その結果、集中して課題に取り組めるようになり、意欲も出てきました。

(2) 他の子供への働きかけ

A君のよい点を認め、努力している姿を学級の子供たちの前で称賛することを続け、一面的に友達を見るのではなく、多面的に友達を理解し受容する気持ちを育てる指導に心を砕きました。その一つの方法として授業でロールプレイを行い、友達の心の痛みや対人関係の在り方などを考えさせるようにしました。また、学級の子供たちとの交流を深めるためのグループ学習や班別の活動は、A君自身の所属感を高め、他の子供たちがA君の存在を認めていくことにつながり、孤立や不適応行動を解決するために有効でした。その後次第に、子供たちにはA君を受け入れようとする心の成長が見られるようになり、学級が一体となって楽しめる活動を企画できるようにもなりました。

(3) 家庭との連携

母親は当初、A君の養育に対して自信がもてなくなっていました。学級担任は、母親の悩みや苦しみを親身になって聞くことに心がけ、学校での指導方針を伝え、家庭との相互理解と信頼関係を深めることに努めました。学校と家庭でのA君の変容や課題を相互に伝え合うことで、母親の協力も得られるようになり、一貫した指導を進めることができるようになりました。

(4) 教職員の共通理解を図る

学級だけの問題にせず、養護教諭やA君に関わる教職員に相談や協力を求めることで、徐々にA君の状態に対する個別の指導や配慮の必要性を全校の教職員が認識し、共通理解の下に、学校生活全般にわたる指導の一貫性や連携がなされるようになりました。学校全体でA君の行動を理解し、共感的に受けとめることができるようになると、A君自身も認められることで自信が生まれ、自分から職員に話しかけることができるようになりました。

 

その後、担任の先生から左頁のような手紙をいただきました。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。