教育福島0214号(1998年(H10)07月)-022page
教育ひと口メモ
わかりやすい教育法令解説
公務災害補償制度
一 はじめに
地方公務員法の中では、職員が公務により負傷し疾病にかかったり、死亡したりした場合、その職員または遺族等がこれらの原因によって受ける損害を補償しなければならず、この補償の迅速かつ公正な実施を確保するための公務災害補償制度を法律で定めることが規定されています。(法四五条)
このような規定を受けて、職員が公務上受けた災害の補償を具体化するため、『地方公務員災害補償法』(地公災法)が制定されています。
本来、公務災害補償は使用者であるそれぞれの地方公共団体が職員に対して負う無過失責任の損害賠償であると考えられていますが、補償を一元的に迅速かつ公正に実施するために地方公共団体に代わって補償を行う「地方公務員災害補償基金」が設けられています。(地公災法一条、三条)
二 公務災害補償制度の概要
(1) 補償の種類
地公災法では、公務上の災害と通勤途上の災害に対する補償が定められています。
補償の種類を内容別にみると
1) 療養補償 2) 休業補償 3) 傷病補償年金 4) 障害補償 5) 介護補償 6) 遺族補償 7) 葬祭補償
の七種類です。
(2) 認定の要件
公務上の災害補償の認定については、職員が受けた災害が公務上のものであるか否かが大きな問題となります。具体的に、ある災害が公務上のものと判断されるためには、その災害が『公務遂行性』を有することおよび『公務起因性』を有することが要件であるとされています。
この公務遂行性とは、職員が公務に従事し、使用者の支配管理下にあることをいい、公務起因性とは、災害が公務と相当因果関係にあること、すなわち、私的または偶発的なものではないことをいうものです。
(3) 認定の手続き
1) 公務災害の認定については、「請求主義」をとっていますが、請求が遅れると補償が受けられなくなる場合もありますので、早めに請求の手続きを進める必要があります。
2) 認定の手続きは、上図のとおりです。
(4) 公務上の災害に該当しない事例
次のような場合は、原則として公務災害とは認められません。
1) 私的行為によるもの
2) 故意又は本人の素因によるもの
3) 天変地変によるもの
4) 偶発的な事故によるもの
5) 私的怨恨によるもの
※ ほかにも、公務上の災害に該当しなかった事例、該当した事例が様々あります。
三 その他の注意事項
(1) 負傷(疾病)は、安易に判断しない。
(2) 交通事故は、慎重に処理する。
(3) 共済組合員証は使用しない。
(4) 診断書等の料金についても補償されます。
(5) はり、灸、マッサージ等による治療の場合は、事前に教育庁総務課を通して基金に照会が必要です。
(6) 転医・転院する時などは、事前に教育庁総務課を通して基金に問い合わせることになります。
四 おわりに
認定の手続きをする場合は、事前に自分で災害の状況を整理した上で、校長や教頭、事務担当者に相談したりしながら請求することが大切です。