教育福島0214号(1998年(H10)07月)-027page
肌が立った。苦戦しながらも「地区三位」をみごと手に入れたのだ。そんな姿を見ていて、高校生のもつはかり知れぬ“可能性”を感じたものだ。クラスの方も、最終学年という自覚がそうさせるのだろうか、次第に一致団結するようになってきた。担任としてはうれしい限りである。そして、自分の将来を真剣に考え、それを達成させようとしている瞳には昨年とは違う光が見える。そんな姿を見ていると、単純なもので過去の悩みなど全て忘れられるのだった。
ふと気付けば、卒業の日まであと半年しか残されていない。今は振り返っている暇はないのだ。その日が来るまで、生徒とともに、一日一日を大切に過ごそうと、それだけを思うのである。
(内郷高校教諭)
家族旅行
鈴木貞安
これまでの夏休みの家族旅行は、親が計画して温泉でゆったりと過ごすことが主であった。そして、車を使ってということで、子供たちは、目的地へ行くための方法や手段を全く考えないで、車に乗ったら親にお任せというパターンであった。便利さ、予算、機動力という点からすると、どうしても乗用車になってしまっていたのである。しかし、この便利さが子供たちの体験的な学びの芽を摘んでいたように思えてならない。
そこで、今年は子供たちに三日間の旅行の計画を立てさせることにした。子供たちは、三人が共通に行きたい所ということから、目的地をディズニーランドに決め、残りの二日間は、東京を探索することにした。
この旅行の目的は、自分たちの行きたい所を自分たちで決め、電車やバスの乗り換えを考えて自分たちで行動することにある。そのため、計画は自分たちで話し合わせ、親を頼らせないことにした。
子供たちは、本屋に出掛けたり、横浜の叔母に電話したりして多方面から資料を収集し、自分たちだけで、地下鉄の乗り継ぎや降車駅の確認、夕食の場所など、次々に決めていった。
長男を中心として、兄妹が楽しそうに話し合いながら計画を作成しているのを見て、親も口出しをしないで最後までやり遂げさせようと見守ることにした。
子供たちは、自信にあふれた顔で、いわき駅からバスに乗り込んだ。
綾瀬駅に着いて、千代回線に乗車するとき、子供たちが迷ってしまった。
「千代田線の切符売場がない。営団線のはあるのに」
ここで親が出しゃばってしまった。出だしから親の失敗である。
三日間、どの駅で乗り換えるかメモを見ながら、考えながらの行動である。地下鉄に乗るとき、降り口の停車駅の順番を必ず確認して、間違いないことを確かめながら乗っている。
地下鉄の線が間違っていたり、遠回りする乗り換えになっていたり、いろいろな失敗があった旅行であったが、子供たちにとっては思い出の夏になったようである。
子供たちは、不安を抱きながらの行動も多かったが、自分たちの計画した旅行ということで、家に帰ったときの顔は満足そのものであった。この表情から、子供が行動できる場面を作るとともに、親として「待つ」ことの大切さを教えられたような気がする。
(いわき教育事務所指導主事)