教育福島0215号(1998年(H10)11月)-025page
普通に会話をし、生活の共通場面をもつことでいいと思っています。仕事仕事で過ごしている時間の一部を、仕事のみに向けていた目の一部を、家庭に、子供に向けることで随分変わってくると思います。「子は宝」です。親にとっても、地域にとっても、国家にとっても大切な子供たちの「健やかな成長」を育むのは何といっても家庭です。
PTA活動は明るく楽しい家庭づくりと子育てやしつけのあるべき姿を研修活動を通して推進していくこと、学校と家庭とを結びつけると共に、同一目的に向かって協力体制をつくっていくことが大きな使命であると思っています。
(郡山市立郡山第六中学校 父母と教師の会会長 郡山市PTA連合会副会長)
教え育むこと
平原信男
その日は、地区小体連陸上競技大会であった。出張を終え、その足で競技会場へ向かった。
やっと着くと、もう競技場には、子供たちの姿は見えなかった。
「ああ、やはり遅かったか」と思いながら、駐車場の方へ車を進めると、最後の子供たちの行列があった。本校の子供たちだった。
車を止め、外に出る。子供たちがまだ遠いのに、
「おおい!」
と、呼びかけた。一瞬の静寂の後、
「うわー。平原先生だあ」と多くの手が振られる。だんだんと近づくのを待ち、子供たちには、
「ご苦労様。どうだった」
と労をねぎらい、引率の先生にはあいさつをし、結果を聞いた。
「やりましたね。今年の六年生頑張りましたね」
と応える私。列に紛れた五年生補欠のYと目が合う。
「先生。N君がね。優勝です。最後のね、ラストスパートすごかったですよ。優勝、優勝」
その後Kとも目が合う。
「せんせ−い。わたし、三分切りましたあー」
私が練習を担当し一緒に頑張ってきた、八百メートル走、千メートル走の子たちである。
子供たちの頑張りは、選手ばかりでなく、控席での応援にも見られたということだった。選手に対しても、応援児童に対しても、先生方があらかじめ計画し、指導すべきことは何かを見据えて子供たちを導いた結果だと思った。
次の日、子供たちは休み時間を利用して、担当の先生にお礼の挨拶に来た。私の所へは、N、K、そしてI、Mが別々に来た。入賞を果せなかったIとMには
「まだ結果が来てないけど、きっと自己記録を更新しているよ。頑張ったね」
と握手を求めた。
職員室には、出場した選手たちの姿がぽつぽつと見えている。優勝した子、入賞を果した子、無念の思いをした子と様々だが、一様にこの子たちの姿を見て先生方の「教え」を垣間見た思いがした。これらの選手たちに、
「今までね、一緒になって教えてくれた先生にきちんとお礼を言わなくちゃね。……」
と言っている担任の先生の様子を。この子の陰に先生があり、教育があるのだと思う一時であった。
(浅川町立浅川小学校教諭)