教育福島0215号(1998年(H10)11月)-033page

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心に残るいい話

県立小高商業高等学校教諭

西山喜代子

 

かのように、話の中に引き込まれていく楽しさを一つの気分転換としています。

 

平生、私は、シドニーシェルダンの本に没頭し、まるでヒロインにでもなったかのように、話の中に引き込まれていく楽しさを一つの気分転換としています。

しかし、最近ふと手にしたこの本を読んでいくうちに、久しぶりに心を動かされ、涙がとまらなかったのを覚えています。特に、最初に書かれていた「涙に輝くりん灯」の話は、実際にあった出来事だそうです。障害のある子が、何かとクラスメートの一部にいじめられ、水泳大会の選手にまでさせられたにもかかわらず、母は「泳いでみなさい」と突っぱねます。母の強く生きてほしいという願いを知り、その子は一生懸命泳ぎます。でも、途中で力が尽きそうになった時、服を着たまま飛びこんだ年老いた校長先生が、両手で支えてくれました。全校生の地響きのような応援にも励まされ、長い時間かかって感動のゴールイン。その後いじめはなくなりました。

何かいい話を本や新聞で見つけた時には、生徒に紹介するようにしています。この話もホームルームでとり上げたところ、目を潤ませていた生徒が多かったのです。感想には、様々な思いが寄せられ、「こんな先生がいてくれたら」という一言には、本気になって守ってくれる先生がほしいという願いが込められていたのかもしれません。

この本は、あるご住職が話されたことを三十八編にまとめたものです。前述の話の他にも、「またやったか」とか「お母さん泣かないで」など印象に残る話があります。一編ずつの中に、生き方やあり方を考えさせられる話ばかりです。他人に無関心どころか、迷惑をかけても知らんふりをする人が多い現在で、この本は、ほんとうの優しさを教えてくれるような気がします。読み終った後に、きっと心に深い感動の余韻が残ることでしょう。

 

本の名称: みんな、みんなありがとう 心を癒すいい話

著者名: 黒木正弘

発行所: 株式会社集英社

発行年: 1998年4月29日

本コード: ISBN 4-08-781152-2

 

心を豊かにするビタミン剤

養護教育課主事

鈴木勝

 

るか、日頃の自分の言動を観察してみるか、という衝動に駆られ、手に取った。

 

本を読むこと。この世の中で私の最も苦痛なことである。幼い時からこの思いは変わっていない。ところが、ある日、暇潰しに立ち寄った本屋で、この本のタイトルが目に止まり、ふと、生まれて初めて自分の人生を振り返ってみるか、日頃の自分の言動を観察してみるか、という衝動に駆られ、手に取った。

私たちは人と接することなく、人生を送ることは不可能である。そして、人と接すれば、何らかの感情が働き、それが正の方向に作用する時には問題ないのだが、負の方向に作用する時には不快感、ストレスが生ずる。

感情の表れ方は、その時々で違うものであり、自分の所有物でありながら、操縦は相当に難しい。省みると、私の心ない言動がこれまで、人々にいかに多くの不快感を与え、心の傷を負わせてきたか、計り知れず、懺悔の念でいっぱいである。

人と接する時、物事を考える時、判断を下す時の選択肢は多い方が、人との良好な関係を持続でき、また、より良い結果が得られる場合が多いだろう。

物事の考え方、伝え方も、その受けとめ方も人それぞれであり、善し悪しの判断は難しいが、この本は著者自身の体験を踏まえ、多くの事例を挙げ、日々の生活を送るうえで、何か行動を起こす際に、幾つかの選択肢を提供し、今までとは違った視点から物事を捉える力を与えてくれた。

この本に出逢ってから、一日の終わりに、その日の自分の言動を客観的に観察し、そして、明日に向けて、常に心にゆとりをもって人々と接し、少しでも人間として成長できるよう心がけている。この出逢いがもっと早い時期だったら、と残念でならない。

 

本の名称: 自分を見つめる心理学

著者名: 加藤諦三(たいぞう)

発行所: PHP文庫

発行年: 1993年4月15日

本コード: ISBN 4-569-56541-7

 

 

 


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