教育福島0216号(1999年(H11)01月)-037page
〇考察
・ 幼児の内在しているイメージと教師の願いが重なることで、やってみようという動きを引き出すことができた。
・ 魚を焼く網を提示した後、やるかやらないかを幼児に任せていくようにすることで、自分の意志で環境にかかわり、遊びを進める姿が見られてきたのだと思う。
−遊びを考え工夫する姿が見えてきた例−五歳児五月中旬
〇教師の願い
自分たちで環境に働きかけ遊びを考え出していけるようになってほしい。
〇幼児の姿
どろんこ遊びを楽しませたいため、教師が意図的に作った築山のそばの小さな池で年少組の時から年長児のやっているどろ団子作りに興味をもち断続的に遊びが続いてきた。
H男は、かためる土をいろいろな場所から集めて、迷路を作ってころがしたり、ボーリングに見立てたりして、毎日のように取り組んでいる。
幼児の姿 思い
〇ころころコミックを作っていたN子が、保育者の行動に気づいた。
N子 「先生、どこに置いたの?」
H男 「そこではダメだよ」
先生もN子ちゃんもわからないんだな。ボクは、もう知っているよ。教えてやろう、うれしいな。
H男 「ころころコミックと書いてある所に置くんだ」
H男 「暗い所でないとだめなんだ」、「冷たい空気が出てこないとダメなんだよ」
H男 「だって、すみれさんに教えてもらったもの」
H男 「だから僕たちは、すごいの作れんだよ」
教師の援助 願い・読みとり
〇「下駄箱の上だよ」
〇「エッ、ダメなの。どうして?」
H男は遊び込んできているから知っていることを自慢させたり、友だちに教えたりさせて、自信がもてるようにしていこう。
なるほど、これが自信なのだな
〇「どのくらいの所からなら落としても大丈夫なのかな」
〇考察
・ H男のやりたいことや、やっていることを受け止めたり、どろ団子の堅さを意識するように働きかけたりしたことで「友達にも教えてやろう」「今度は、もっとこうしてみよう」という気持ちが強くなり、遊びに意欲をもち、考えたり工夫したりする姿が見られるようになったと思われる。
・ 幼児が、いろいろな環境に働きかけて遊びに夢中になれたのは、幼児の興味・関心や育ちを捉え、それを生かした遊びが実現できるように援助してきたことにより、「どんな所でも、どんな物でもと遊べることに気づき「ここはどうかな、これではどうかな」と試すようになったからと思われる。
五 研究の成果と課題
(1) 幼児の言動や表情を記録し、それを基に職員間で話し合ってきたことにより、幼児が何を考えているのか、何をしようとしているのかという内面を読み取ることができ効果的であった。
(2) 幼児の思いを大切にして、じっくりとひとつひとつの遊びに取り組んでいけるように、園の自然環境を生かしながら場や時間を保障することにより欲求が満たされ、自分たちで遊びに合った場や遊びを考えたり、工夫したりできるようになった。
(3) 幼児の育ちに合った援助をするためには、幼児の内面の読み取りを適切に行うことが重要であることを痛感した。また、援助は幼児の遊びに大きな影響があることを再確認することができた。
(4) 園だけで幼児理解をしていくことには無理があるので、幼児一人一人の育ちを捉えていくために、さらに家庭との連携を図っていきたい。また、園での遊びが家庭でも実現し、発展したり豊かになったりするように家庭への働きかけが必要である。