教育福島0218号(1999年(H11)4・5月号)-034/52page

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を組み合わせた指導が行われています。また、視聴覚機器等の教材・教具を活用し、指導の効果を高める工夫も行われています。



三 通級指導教室における指導の実際

―県内A小学校の平成十年度の実践―

本校の通級指導教室は、通称「ことばの教室」と呼ばれ、地域の小学校通常学級から通ってくる言語の発達に何らかの問題をもつ児童に対して、その障害の改善を図り、社会生活に適応できるようにするための治療的教育を行っているところです。

障害の種類―構音障害、吃音(どもり)、言語発達遅滞、口蓋裂等―や程度に応じて個人ごとの指導計画を作成し、個別指導を原則として指導しています。また、保護者や在学校の担任との連絡を密にし、指導の成果が一層上がるように努めています。

ここでは、小学一年生のA君の指導事例を紹介します。

l A君の実態

吃音のような状態が見られるようになったのは三歳初めで、その当時は、最初の音を伸ばすことや最初の音をくり返すことが認められるだけで、その頻度もあまり多くはなかったそうです。しかし、両親、特に父親がその状態を何とかしようとして、あれこれとことばに対する干渉をくり返しているうちに、次第に吃る頻度が多くなってしまったということでした。

その後、幼稚園の年長組になった六月上旬、幼稚園の先生に勧められて、本教室に教育相談に来たときには、A君の吃音は、ほとんどのことばで最初の音がなかなか出てこない状態になってしまっていました。しかも、顔をしかめたり目を閉じたりするなどの随伴運動も多く生起し、話すことを避けようとする様子も見られました。かなり深刻な状態に陥っているものと推測されました。

A君の場合、吃音のほかに構音障害があり、カ行音、サ行音がハ行音に、ガ行者、ザ行音がダ行音に、シャ行者がヒャ行音に置換されており、話の内容が聞き手に正確に伝わらないことがありました。

そこで、A君に対する指導目標及び指導方針を次のように立て、指導に当たることにしました。


2 指導目標

1)気軽に話せる雰囲気の中で、のびのびと自己表現ができるようにする。

2)話したり音読したりすることの楽しさを知り、徐々にその能力を高めることができるようにする。

3)吃音を抑えるための手立てを効果的に活用し、流ちょうなスピーチをより多く経験し話すことへの自信を取り戻すことができるようにする。


3 指導方針

1)吃音や構音障害だけを取り出して指導するのではなく、ことばによる表現能力(会話、音読、発音など)全体を高めるための働き掛けの中で、吃音や構音障害を改善するための指導を行うようにする。

2)吃音には、良い状態と悪い状態を周期的にくり返す「波現象」があるので、常にA君の状態に合わせて柔軟な対応ができるように心掛ける。

3)家庭や学校との連携を密にし、指導の成果が日常生活に生かされるようにする。

4)吃音児への接し方、干渉や罰の排除等について、保護者の理解を促し、家庭における環境の調整が図られるようにする。


4 指導の経過とA君の変容

初回の教育相談のときのA君の吃音状態は、かなり深刻であると思われたので、定期的に教育相談を行い、吃音の変化を見守っていくことにしました。

両親や幼稚園の先生に対しては、A君へのかかわり方や留意すべきことについて、できるだけ多くの情報を提供し、言語環境の改善に努めていただき表した。

就学後は、A君がじっくりと余裕をもって学習に取り組むことができ、また、両親との話し合いも十分できるよう、週一回、二単位時間を合わせて九十分の時間で指導することにしました。

一学期は、ラポートづくり、発話意欲を高めるための指導、音読による吃音指導へ移るための文字指導の三つを柱にて指導することにしました。

まず、紙しばいの視聴、ことば遊び、絵かき歌、自由会話などの活動を通して、自由な発話を引き出すよう心掛けました。ラポートづくりもスムーズにいき、次第に声も大きくなり、見違えるほどよく


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