教育福島0219号(1999年(H11)6月号)-026/52page

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に泳いでいるのか、魚はどんなことを考えているのかなどに思いを巡らせることで、気持ちがリラックスして何時間でも飽きずに過ごすことができた。

さて、教師の仕事について考えてみると、一番大切なことは、生徒の考えを理解しようとすることである。教師自身が心にゆとりを持って、リラックスした状態の時は柔軟に対応できるが、忙しすぎて仕事に追われている時は、なかなか生徒の気持ちを理解することができない。

また、生徒の前で「自分は教師だ」と気張っている場合も、生徒に柔軟に対応できないということが、経験上よく分かる。

自分なりに自然な気持ちでいる時は、周りがよく見え生徒の気持ちもよく分かるものである。久しぶりの休日でゆったりした気分でいる時には、それまで難題だと思っていたことに良いアイディアが生まれ解決できることもある。できれば、毎日そんな気持ちで生徒と接したいと思っている。

今、私は生徒の顔を見る度に元気が湧いてきて、毎日の勤務が楽しくて仕方がない。自分の予想外の言動をする生徒がいると、より一層楽しくなる。

授業はもちろん大切であるが、生徒たちは今、遊びの中からも多くのことを学んでいる時期だと思う。私自身がいつもゆとりを持って、生徒の学習や遊びなど生活全体を見渡した生徒理解を進めていきたい。

(会津高田町立第一中学校教諭)




修  業

伏 見 伸一郎

伏見伸一郎

 

俗な話で恐縮だが、私はテレビをよく見る。中でも結構気に入っている番組は、今にもつぶれそうな料理屋の主人が、その道の達人の下で再修行をし、腕を磨いて店を繁盛させようとする、ドキュメントタッチの番組である。

主人は生活がかかっているので、真剣に取り組もうとする。しかし、今まで繁盛しなかったのにはそれなりの理由があるようで、ほとんどの主人は甘えた気持ちが暴露され、修業の途中でやめたり、涙したりする様子が、ブラウン管に映し出される。達人は、そんな主人の弱い部分を一瞬で見抜き、厳しい言葉を浴びせながらも、的確なアドバイスをしてくれる。

この番組を見ていると、世間の厳しさと修行の大切さを実感できる。一人前になるには、自分で納得できるまで、とことんやってみることが大切なのだ。

さて、我が身を振り返ってみるとどうだろう。恐れ多くて一人前になったなどという台詞はまだはけない。しかし、授業について、とことん悩んだことは何度かある。

ある時、児童が主体的に話し合うにはどうすればよいのか、という疑問がわき起こった。そんな折、ある小学校の授業公開を参観した。そこでは、まるで学級会のように児童同士が指名し合いながら授業を進めていた。なるほど、良い方法かも。でも、この方法を児童に会得させるにはどうすればよいのか…。そこから、自分の授業を見直す作業が始まった。

やがて、四苦八苦しながらも、何とか形になってきた頃、今度は自分の授業を見ていただくことになった。児童は時間がオーバーするほど活発に話し合った。内容が良かったので自信満々で反省会に臨んだところ、先輩の先生に時間の使い方を指摘された。「導入部分がもたもたしていたので、せっかくの話し合いが生かされなかった。導入はすっきりしなさい」と。最初は納得できなかったが、冷静に考えてみると、もっともな話に思えた。そして、再び自分の授業を見直すことにした。

あれから六年。今でも授業の悩みは絶えない。でも、そんなときには冒頭で述べた番組を見て、情けない主人に自分を投影して、がんばろうと、ひそかに自分を鼓舞することにしている。

(原町市立原町第三小学校教諭)


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