教育福島0220号(1999年(H11)7・8月号)-024/52page

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二ヵ月をかけて、男子が長さ七メートル、直径一・三メートルの枠組みを竹と番線で作り上げ、女子は化粧回しのための畳表を約六十枚縫い合わせる。この作業は、地元の竹屋さんや桶屋さん、さらに若いころから須賀川の松明あかしを盛り上げてきた松明名人と呼ばれる方にもご指導をいただきながら行われる。また、他の選択教科でも松明あかし参加を盛り上げるため、美術科ではポスター作り、音楽科では当日の応援歌の練習やそのオリジナルの応援歌を楽譜にする作業も行っており、これはまさに総合的な学習とも言える。

祭りの前日に、三年生全員が重さ約ニトンにもなった三中松明を学校から会場まで二時間をかけて交替しながら担いで運ぶ。その重さは肩にズッシリと食い込み、毎年生徒たちは、「この重さは一生忘れられない」と感想を話す。当日、ほとんどの三年生が会場に集まり、中学校生活への思いを込めた松明に声援を送る。燃え上がる松明の前で校歌や応援歌を歌い上げると三年生の心が一つになり中学校生活のよい思い出がまた一つ出来上がる。

今年で三中松明も第八代となる。材料の調達から、講師の先生への連絡、道路使用の許可申請、陰で支えてくれるPTAの方々との打合せ等、行事を成功させるための渉外活動は、大変である。しかし、生徒たちの生き生きとした活動と地域に根差した教育ができるこの体験活動はとても充実している。生徒たちには、「将来、大松明を製作し、担いで祭りを盛り上げる市民になってほしい」と願う。我々教師もこの祭りに携わっていくことで「須賀川のよさ」をたくさん感じることができ、本校の「松明あかし」参加を誇りに思う。

(須賀川市立第三中学校教諭)



邂逅

鈴木佳菜

鈴木 佳菜

三月十九日。十二時の時報と同時に合格者の発表。途端に沸き上がる歓声。私は自分の生徒となるであろう子供たちと初めて対面した。「やった一!!」とガッツポーズ、友達と交わす固い握手、涙……。私は思いも寄らない光景に立ちすくんだ。

この子たちはこんなに望んで、この学校へ入学して来るんだ、こんなに喜んで入って来るんだ。私は、衝撃で胸がいっぱいになった。

初任で本校へ赴任して一年足らず。正直に言って、高校生が高校入学を心から望んで、そして入って来ているなどということは思ってもみなかった。

その日、すでに新一年生の担任が決まっていた私は、どんな生徒が入ってくるのか、と軽い気持ちで合格発表を見に出かけたのである。

初の教師生活。机間指導とは名ばかりで、「起きなさい」と声を掛けながら歩き回る授業、「やる気はあるのか」と憤ることも多かった一年。そんなことはすべて、目の前の光景の衝撃で吹っ飛んでしまった。

この喜びと期待を裏切ってはいけない。そう心に誓わざるを得ない瞬間だった。この子たちのこの感動を曇らせてはいけない。その気持ちを失望させてはいけない。心の底からそう思った。

そして二ヵ月がたった今。私のささやかな誓いと多大な感動などつゆ知らず、緊張が解けきった生徒たちは好奇心旺盛なヒナのようにピーチクパーチクと一瞬たりとも黙ってはいない。「先生、今日は早く帰れるの?」「先生、明日は授業ある?」相手は高校生なのか小学生なのかよく分からないような毎日である。


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