教育福島0220号(1999年(H11)7・8月号)-029/52page

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りました。

S先生からの的確な状況報告がなかったら、私は一方的にT男を悪者と決めつけ、T男に寄り添ってその時の気持ちを理解してあげられなかったかも知れません。

このように、保育者同士の日常的なよいかかわりがあってこそ、子供の思いや育ちもよく見えてくるものです。

主任という立場になった今、子供たちが安定した気持ちで園生活が送れることを第一に目指しています。そのためには、まず保育者同士がかかわりを大切にし、緊密にしていかなければならないと強く思う今日このごろです。

(新鶴村立新鶴幼稚園教諭)


放課後の実習室

片平仁

片平 仁

六月になると放課後のデザイン科学科の実習室はとても賑わう。各実習室を覗くと、卒業制作に取り組む三年生が大作を前に格闘している姿があり、「何でも部屋」の美術室では、ようやくデザイン科学科の生徒らしくなってきた一年生が居残りで課題をやっている。傍ら、提出締め切りが近くなりピリピリとした雰囲気で制作に励んでいる二年生、受験対策用のデッサンをやっている三年生と、多くの生徒が熱心に制作に取り組んでいる。

中でもCG室は生徒の出入りが最も多い部屋だ。この部屋で一番汗を流しているのは二年生のCGコースの生徒たちだ。今、彼らは最初の大きな課題に取り組んでいる。課題名は「缶ドリンクのラベルデザイン」。コンビニや自動販売機等で見かける缶入りドリンクのラベルをデザインするのだ。実際の制作は、ワープロソフトで文字だけの企画書を作ることから始める。次に、企画書に添付するイメージ写真等を画像処理ソフトでコンピューターに取り込み加工する。そして描画ソフトでラベルをデザインし、3Dソフトにそれを書き出し、架空の商品の合成画像を作り、一枚にまとめ上げる。識者から見れば、なんと無鉄砲な、と思われるだろうが、最初からデザインの現場で使われているようなやり方で、私たちは生徒をハードとソフトに取り組ませる。

福島西高校デザイン科学科は設立五年目の若い学科である。平成七年春、私は、暫定的に承認された教育課程、手狭な美術室が一つというところに初代スタッフの一人として着任した。文字どおりゼロからのスタートであった。

現在では施設設備も整い、教諭、講師十名のスタッフで専門科目の指導に当たっているが、私たちの日常はとても慌しい。一年生の共通科目の課題、二・三年生の専門科目、卒業制作の指導に加えて、実技科目の受験指導がある。わが科のそれは実技課外と言うべき性格をもちあわせている。

放課後、受験対策や授業の課題をやっている生徒たちの間を私たちは巡回する。技術的な問題の指摘はオンボロ建物のリフォーム感覚なのだが、手が止まっている生徒が私たちのメインターゲットだ。

私たちは、言葉を探す。多弁は逆効果。どこがつまずきの原因なのか。この生徒は、どんな子だっけ……。心と腕とに響く言葉、響く言葉。私たちは、言葉を探す。

(県立福島西高等学校教諭)


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