教育福島0220号(1999年(H11)7・8月号)-033/52page

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中学校の在籍児童生徒が六七%を占めています。小学校・中学校に在籍している「指導上配慮を必要とする子供たち」の相談ニーズの高まりと学校での個々の特性に応じた対応への気運の高まりがみられます。

二 教育相談事例から

事例一

Q君は小学三年生です。家庭では特に気にかかることはないのですが、「授業中落ち着きがなくじっと席に着いていられない」「すぐカッとなり乱暴する」とのことで相談に訪れました。両親は、このようなQ君を叱ってきました。友だちの親からの苦情もあり、大変悩んでいました。

このような子供のケースでは、表面的な行動にばかり目がいきがちで、子供のわがままや家庭のしつけが悪いと考えられがちです。しかし、その子供が、そのような行動をとらざるを得ない心情やその子供のまわりの状況を把握し、理解することなどが大切です。

Q君についても両親や担任との話し合いと来所時の行動観察から次のような状況把握を行いました。

○幼児期から落ち着きがなく友だちと遊べず、集団参加への困難さ、社会性の未熟さがあったこと。

○発達の偏りが伺われたため、心理検査により発達の特性を把握すること。

その結果、1)学習活動に見通しがもてない状況にあると、集中できにくいこと、2)非言語的能力が言語的能力より優位であり、ことばより視覚的な情報を活用することが得意であること、などの特性が明らかになりました。

そこで、互いに認めあい安心できるクラスの雰囲気つくりを基本とし、家庭、学校で次のようなかかわりをしていくこととしました。

・活動に際しては、手順を明確にし、見通しを持って取り組めるように配慮する。

・言葉による情報提示ばかりでなく絵や図表などの視覚情報での提示を多くする。

・安心できるクラスの雰囲気をつくり、Q君の発見や考えを共に認めあう。

前記のかかわりにより、Q君も徐々に学習に集中して取り組めるようになっていきました。さらには友だちとの関係も改善されていきました。それに伴い両親の不安もしだいに軽減していきました。

一人一人の特性を見極め、その特性を尊重したかかわりには、それなりの時間と労力を伴うものです。しかし、そのことにより子供たちは存在感と活力を得ることができます。

事例二

P君は、小学五年生です。理解力はあるようですが、黒板の文字を写したり、本を読んだりすることがとても下手で、何度読み返させても理解できない、ペーパーテストとなると極端に理解できなくなる、とのことで相談に訪れました。

P君は、もののとらえ方、感じ方などの認知面で特性がありました。眼で見ての読みとり面で弱さがあり、眼で読んで理解するということが大変困難でした。しかし、耳で聞いたことについての理解は優れているということがわかりました。そこで、机間指導の際に、問題を読み上げてやるなど読みへの支援をしたところ、理解力が高まり、学習活動への自信をつけただけでなく、生活全般的にも明るさを増していきました。

三 違いを認めて

子供たちの中には、様々な原因により、眼や耳が不自由、知的発達の遅れ、運動・動作が不自由、病気や体が弱い状態にあるなど教育上配慮が必要な子供たちがいます。これらの子供たちに対しては、その不自由さや困難さに応じた教育上特別な配慮や指導が必要です。そこで、障害などの違いに応じた教育内容・方法が工夫されることになります。

しかし、障害のあるなしにかかわらず子供はもともと一人一人違いのある個性的な存在です。大なり小なりどの子供も得意なものもあれば、不得意なものもあります。それらを認めてこそ子供は、発想の豊かさや大胆さ、好奇心の旺盛さなどの子供らしさを発揮するものです。みんな同じくという発想からは、一人一人の子供の個性を大切にした教育は成り立ちません。違いを認めてこそ子供は、生き生きと活動し、個性を発揮するものです。

一人一人の違いを認めること。それは存在感を高める生きる力を育むことにつながります。


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