教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-028/52page

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す。そんな生徒たちを私たちは土木技術者の卵として一人でも多く社会に送り出してやりたいと願っています。

話は変わって、現在私は山岳部の顧問をしています。自然の中にいることがとても楽しく、植物や魚、鳥が息づいている中で楽しませてもらっています。ところが私が教えている土木技術が私の好きな自然を破壊している第一級の戦犯という感があります。事実、従来の土木工事は、近代合理主義のコンセプトを実現するために、必然的に自然破壊の最前線にありました。しかし、土木技術が人類の発展に寄与してきたことも間違いありません。土木工事が残した負の遺産は、国民の生命と財産を守り、経済効果を上げるためにやむを得なかったことを理解しておいていただきたいのです。現在ではそういった負の遺産に土木技術者自身気が付くようになり、日本のいたる所で、試行錯誤をしながら自然と共生できる計画が模索されています。自然の力を理解し利用する、それが本来の土木技術です。

土木にたずさわる者だけでなく、私たち市民が、便利な生活を続けている限り、自然へのインパクトは無くなりません。必然的に自然に全く影響を及ぼさない土木工事や、自然をもとあった状態に戻すことは不可能です。私たち自身が便利な現在の生活を放棄しない限り、全く自然を破壊しないというのは不可能だと思います。しかしながら、私は土木科の教師として、そういった自己矛盾を抱えながらも、理想から遠いからと言ってあきらめるのではなく、今出来ること(自然との共生)を探し続ける姿勢を持った土木技術者の卵たちを育てることが出来ればと考えています。

(県立平工業高等学校教諭)



手紙

伊藤美子

伊藤美子

現在は、携帯電話やEメールなどさまざまな便利な手段があるので、手紙は以前ほどは書かれなくなってしまったのではないかと思われる。しかし、手紙を受け取り、封を切り、それを読むことの喜びは、電話などとはまた違って、ことのほかうれしく感じるものである。

教員になって二十三年が過ぎ、教え子たちから折にふれ近況報告の手紙をもらう時は、教員になってよかったと感じるひとときである。高校や大学に合格した報告、憧れの職業にようやくつくことができた喜びの手紙、結婚の報告や招待。そして、出産の報告など、教え子の成長や活躍や喜びか文面から伝わってきて、我がことのようにうれしくなってくる。

今年の年賀状に、一通の封書が混じっていた。かつての小学校で一、二年と担任した教え子からのものであった。今年大学を卒業する予定で、教員をめざして頑張っていることが、細やかな字でびっしりと便箋三枚につづられてあった。 

そこには一年生の時、書き方でほめられて、ノートからはみ出しそうな花マルやたくさんのはんこをもらえるのがうれしくて一生懸命書いたことや、一緒に跳んだ縄跳びなどが思い出として忘れられないなどと記されてあった。

彼女が希望を実現させて、教員になれることを祈った。

数日後、イギリスから大きな茶封筒が届いた。差出人は去年、私の受け持っているクラスに、二週間体験入学したイギリス在住の女の子ジュリちゃんであった。彼女の父親はイギリス人であるが、母親は喜多方市出身なので、日本の


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