教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-035/52page
って意味のある生活環境となるように主体的な活動を促す状況設定を行うことが大切となります。そのためには、発声、顔の表情、身体接触、アイコンタクトや注視の方向など、児童生徒が係わり手である教師に示す行動をきめ細かく観察し、児童生徒の行動の発現に至る様々な要因を適確にとらえた対応を行いつつ、可能な動きや行動が生かされるよう、活動への誘いかけを行う必要がありま。また、重度・重複障害の児童生徒は受け身の生活になりがちですが、可能な限り自律的な生活へと生活スタイルの転換を図る必要があり、そのためには、日頃から様々なことを自分で決定するという体験の蓄積が重要となります。具体的には、指導の実際場面において、児童生徒ができるだけ自分で選択できるような状況や場面を設定し、対人関係やコミュニケーション関係がとれるようにするとともにそれが少しずつ拡大していくように働きかけていくことが必要です。
(3)自己実現につながる取り組み
家族や他の人の支援があれば、訪問指導時以外や卒業後でも取り組むことができ、しかも生きがいが得られるような活動を見いだしていくことが重要な課題となっています。
また、卒業後の社会参加を可能とするために、家庭が中心であった生活環境を、自宅周辺の施設等を利用することにより地域社会へと広げていく取り組みが必要となります。
(4)校内支援体制の確立
訪問教育担当教員は様々な指導上の問題や悩みを抱えています。特に、教育の場が家庭であるため心理的な負担も少なくありません。訪問学級は、校舎内学級と組織上はまったくかわりません。他の学級と同様に適切に運営していくためにはすべての教員の理解と協力が必要になります。そのため、担当教員や児童生徒及びその家族を対象とした校内の支援体制の確立が重要な課題となっています。
おわりに
訪問教育は、働きかけに対する反応が少なかったり、行動が読みとりにくく、しかも健康上の配慮が必要な重度・重複障害の児童生徒が対象であるため、担当教員には高い専門性や指導力が求められます。 また、担当教員を支える指導体制づくり等の制度面においても充実が求められています。これらの課題の解決に努め、訪問教育の質的向上を図ることが、養護教育の充実につながるものと考えております。
「おはようございます。お変わりありませんか」と言って先生がやってきます。
我が子はこの頃先生のことがわかるのか、にっこりと笑うようになってきました。早いもので、我が子が養護学校に入学して一学期が過ぎました。先生の温かい指導のもと、我が子も頑張っています。
我が子が養護学校への入学が決まったときは、私たち夫婦は複雑な状況に置かれました。言葉の障害や両上肢、移動障害などのある我が子に対して、一体どのような教育ができるのか不安を感じたからです。しかし、養護教育は、その障害の状態に応じた適切な教育であり、安心して我が子を任せることができます。また、担任の先生には、いろいろな面で親近感を抱くと同時に、養護教育の目指す理想に情熱を注ぐエネルギッシュな人柄であることが感得されました。
こうして、我が子も、大きな声で笑ったり、うれしそうな顔をしたり、時にはいやな顔をしてため息をついたりして、自分の意思を伝えることができるようになりました。ここまで成長するとは考えてもいませんでした。
今では、我が子も訪問の日を楽しみに待つようになりました。笑顔が生き生きとしてきたことが、一学期の大きな収穫です。これも担任の先生の細やかな愛情をもって我が子に接していただいたおかげだと感謝しております。
(ある保護者の言葉から)