教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-042/52page

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平成10年度養護教育研究実践

研修講座・研究論文

「活動に主体的に取り組む力を育てる指導のあり方」

−S児の興味関心を大切にした指導を通して−

県立大笹生養護学校教諭 渡辺裕二

一 主題設定の理由 

教師が各家庭を訪問して指導に当たる訪問教育の対象となる児童生徒は、障害の程度が重度で障害も重複していることが多い。肢体不自由を伴う場合、運動・動作面での制約も多く、自発的な行動につながるような小さな表出を周りが見逃してしまったり、設定した学習計画や準備した教材・教具が子供の障害の実態とうまくかみ合わなかったりすることがしばしば出てくる。また、興味関心を示す内容が限られる等の理由から、学習意欲も低くとらえられがちである。 

児童生徒が毎回の訪問授業で活動に主体的に取り組む中で精神的な充足感を味わい、充実した思いを日々積み重ね、より豊かに生活していってほしいと願って、これまで指導に当たってきた。 

そのためには、まず児童生徒が興味関心をもてる活動の設定が大切になる。興味関心を喚起する上では、「一つ一つの活動内容を理解すること」「何をどうする(操作)とどうなるという活動の見通しをもつこと」などが大事である。また、児童生徒が「自分でできる内容」を取り入れることで成就感や満足感が得られるようにすることも大切であると考える。そうした条件が満たされることで活動への興味関心もさらに増し、楽しさやおもしろさをより強く感じたり、新たな内容に興味関心を示したりすることにもつながっていくからである。そして活動の流れに見通しがもてるように、子供の実態に応じて段階を細かく追って指導したり、反応を待ちながら一つの内容を繰り返し指導したりすることが大切になってくる。 

本研究の対象児は、中学部三年生の男子で重度の知的障害があり、脳性まひ、てんかんを併せもち訪問教育を受けている。担任として接して三年目となるが、当初は私自身、訪問教育は初めてであり、様々な戸惑いを感じつつも、かかわりの中で少しでも笑顔を見せてくれればという思いで授業に臨んだ。 

今回の実践においては、知的障害と肢体不自由を併せもち訪問教育を受ける生徒に対して、興味関心に基づいた継続的な指導を通して活動に主体的に取り組む力を育てていきたいと考えた。三年間の指導経過から活動に主体的に取り組む力はどのように育っていくのかを明らかにしたいと考え、本主題を設定した。 

二 研究の目的 

障害の重い生徒の行動を適切に読み取ることを心掛け、興味関心から生まれる主体的行動を通して、充実した学習活動を日々積み重ねていくことの重要性を明らかにする。

三 研究仮説 

知的障害と肢体不自由を併せもつ訪問教育対象児に対して、生徒の行動の意味を適切に読み取っていくことを心掛けて、興味関心に基づいた指導を進めていくと、充実した時間を共有することができ、この充足感の積み重ねを通して、より主体的に学習に取り組む力が育まれるのではないか。

〈仮説検証のための基本方針〉

1 対象児の行動の意味を教師が適切に読み取るように心掛け、本児自身から出る行動を学習に生かしていく。


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