教育福島0221号(1999年(H11)9月号)-043/52page

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2 指導する内容は、これまでの指導及び家庭からの情報を基に興味関心を示す活動を複数準備する。

3 本児が見通しや予測を立てられるように活動の工夫をする。

四 研究計画 

1 方法 

○家庭訪問授業における指導 

○興味関心に基づく活動を幾つか設定 

○変容の姿を明確にとらえるため三年間の指導経過を整理 

2 対象児

○知的障害と肢体不自由を併せもち訪問教育を受ける中学部三年生男子S児。知的障害(重度)、脳性まひ、てんかん。

○「はい」「パパ(父親)」「せんせ(先生)」等の単語を言うことができる。

○要求の伝達手段として、ゆっくり両手を胸の前で合わせる(〜してほしい)という身振りサインはあるが、両上下肢、体幹にまひがあり他の身振りサインはまだ十分に獲得されていない。

○座位保持いすにより三十分ほど座位の保持はできるが、首の座りが不十分ですぐ首を前に倒してしまう。

○視線がなかなか一点に定まらないため、対象物を注視することがむずかしい。

○音に敏感でキーボードやギター、パイプシロホンなどの楽器の音に興味を示す。また、擬音の繰り返しや語感や音の響きのおもしろい言葉を聞いて楽しそうに笑う様子が見られる。

○両親と二人の弟、本人の五人家族。両親は本人の療育に非常に熱心であり、家族全員が本児をとても大事に考えて温かく接している。

◇興味を示す学習◇ 

音楽的な活動(童謡や楽器)絵本の読み聞かせ 身近な生活の中で耳にする様々な音

五 研究の実際と考察 

◇一年目(平成八年度)

対象児が興味関心を示す事柄や活動を探りながら、教師とのかかわりを深めていくことを大事にした指導 

◇二年目(平成九年度)

前年の指導方針を継続しながら、本児の反応を大切にした接し方を心掛けた指導 

◇三年目(平成十年度)

対象児の興味関心に基づいた指導の重要性を再確認し、様々なかかわりを通して、興味関心の幅を広げ、質を高めることを大切に考えた指導

1 指導内容

(1)訪問教育の教育課程「養護・訓練を主とする指導」の中から「環境の認知」「意思の伝達」に関する内容

(2)主として取り上げる指導内容 

1) 音楽的な活動(童謡や楽器)

2) トーキングカードやカセットテープを聞く活動 

3) 絵本の読み聞かせ 

2 指導の実際

【音楽的な活動(童謡を聴く、キーボード・ギター・パイプシロホン等の演奏)】

−平成八年度− 

当初、母親から童謡を聴くこと、楽器で音を出すことが好きであることなどの情報を得ていた。 

本児が耳を澄ませる様子を手掛かりに、童謡にも特に好きな歌があることが分かってきた。 

また、自らギターに手を伸ばしてきたことをきっかけとして、実際にギターの音を出させて童謡を歌うことへ発展させていった。すると、新しい曲でも「何だろう」と耳を澄ませて聴き、気持ちが高まって声を出す様子が見られてきた。

楽器で音を出すタイミングが曲のリズムにちょうど合ったときに、「うまい」と称賛すると本人もその意味が分かり、うれしさがさらに増す様子が見られた。 

これらの学習の積み重ねを通して本児の心の中に教師と一緒にギターを弾いて歌いたいという気持ちが湧き上がってきたように感じる。

−平成九年度− 

歌に合わせてお腹から絞り出すように精一杯大きな声を出したり、ギターの弦にしっかり指を掛けて強く響くいい音を出すことができるようになり、満足そうな表情をたくさん見せるようになってきた。 

姿勢についても、自分なりに工夫して弾くことで、音の出がよく


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