学校でカリキュラムに組み込まれているどの教科も、それぞれ大切なものです。しかし、生きる力としていちばん必要なのは自分の思いを伝えたり、相手を理解したりする想像力、表現力としての「ことば」を培うことでしょう。
ことばなくして考えることは出来ません。
「キレル」とか「ムカツク」というのは、ことばが見つからない状態のぎりぎりの自己表現でしょう。まだことばで訴えているのですから救いがあります。
ことばが育つ心の教育こそ最優先されてほしい。
ことばを探すことは宝探しです。いっぺん見つけたら、ずっと財産としてその人を肥やし続けていくのですから。
ナチスの犠牲となった少女アンネ・フランクは、隠れ家での崩れてしまいそうな精神を、日記を書くことで支えることが出来たのです。最悪の条件の中でさえ、自己を啓発し続けることができたのも、イマジネーションとしてのことばに支えられていたからにほかなりません。
流出する激しい感情は「ことば」を得て、他者との理解を探る方向へと向かうでしょう。それはやがて文学を創造し得る力になるかもしれません。
行き場を探せない感情に、ナイフを持たせてしまう轍を踏まないためにも、その子を一生支える糧としての「ことば」を、時間をかけて育んでほしい。
心に届く教師のことばで。
【著 者 紹 介】
浜祥子・はまさちこ
〔略 歴〕
北海道に生まれ福島県三春町で育つ。県立安積女子高校、中央大学文学部卒。教師を経て、創作童話、児童向け読み物の執筆に携わる。
一九八九年 童謡「折り紙にしたいな」で童謡大賞受賞。 一九九二年 童話「おじいさんのすべり台」で小川未明文学賞大賞受賞。 〔著 書〕
せかい伝記図書館 「レオナルド・ダ・ヴィンチ」 「キュリー夫人」 「マゼラン」 (いづみ書房) 「野菜をつくる農家」 「ことばづかい大研究」 (ポプラ社) 「初旅のスペイン語」 (南雲堂フェニックス) 「おじいさんのすべり台」 (NTT出版) 「ドンはふつうのねこじゃない」 (旺文社)