教育福島0222号(1999年(H11)10月号)-029/52page

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した。

そして、卒業の日、「自分は何をやりたい、何になりたいという夢を持ち、それに向かってがんばれる人になってください」

と最後の言葉を贈りました。

今、私の目の前で、美容院の中を忙しそうに動いているFさん。来年の四月には専門学校を卒業し、国家試験を受けて、早く一人前として認められたいと話していました。さらに、Fさんの夢は、将来小さな店を開くことだそうです。

しっかりと自分の道を見つけ、一歩一歩努力しているFさんは、自信をつけ輝いていました。いつか、Fさんの小さな店で髪を切ってもらうのを楽しみにしています。

(須賀川市立第二小学校教諭)





身の回りに目を向ける

樽井 亮

樽井 亮

この春、新採用の理科教師として、海の近くの中学校に赴任した。あわただしい毎日を過ごすなかで、ふと自分の小学校時代を思い出した。

その学校では、校庭の片隅に咲く花にもいちいち名前が添えてあった。当時私は、名前はもちろんのこと、どんな植物かもほとんど分からなかったが、理科の先生は、教科書に書いてあるなしにかかわらず、事細かに説明され、きまっていくつかの草花の名前をテストされた。そのころは名前を覚えるのに必死で何も考えられなかったが、思えば、「もっと身の回りに目を向けよう」と、暗に教えてくださったのだと、今気づく。

一年生の学習に、身近な植物の観察や実験などを行う「植物の生活と種類」というのがある。授業で、「みんなの身のまわりにある花を学校に持ってきて観察してみよう」と言ったら、近所の花屋さんで買ってきたらしい包装紙に包まれた花を持ってきた生徒が数人いた。指示の不適切さは大いに反省するが、近くの山や川、池などにしばしば出かけ、そこに住む動植物と戯れるといった少年時代を過ごしてきた自分には、ちょっとショックだった。花と言えば、花屋さんにあるものしか思い浮かばないようでは、自然への関心はおろか、豊かな心を育てることも難しいと思う。

身近なものに目を向けることの大切さは、何も理科の学習においてだけではない。生徒一人一人が、学校のこと、友達のこと、家族のこと、地域のことなど自分たちが生活している環境に関心を持ち、積極的にそれらに関わろうとする意欲や力を身につけることは、とても重要だと思う。そのためには、教師もまた、生徒を取り巻く環境に目を向け、そこにある素材を教材として取り上げることができる鋭敏な目と確かな腕を持たなければなるまい。

自分の育った町には、海はなかったけれど、ここには、太平洋の大海原がすぐ近くにある。もちろん、山や川、池にも恵まれている。この恵まれた環境を生かし、子供たちと共に身の回りの自然から多くのことを学ぶことができたならば、どんなに素晴らしいかと思う。そのような教師を目指し、自分なりに努力する昨今である。

(浪江町立浪江東中学校教諭)

イラスト


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