教育福島0222号(1999年(H11)10月号)-039/52page

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「生きる力」を育むボランティア活動

県立郡山東高等学校


本校は、ノーマライゼーションの理念の基に障害者への理解を深め、障害者と接する機会を生徒全員に設けたいという考えから次の二つの行事をそれぞれ年二回行っています。

(一) 郡山養護学校との交歓会

(二) 国立療養所福島病院の訪問

(一)の行事は生徒会が中心となって行います。実施に当たり両校の生徒会役員を中心に事前の準備などの企画運営を行い、前回までの反省、成果を踏まえ、能動的で積み重ねのある交歓会になるよう両校で十分な連絡を取り合います。その準備過程での生徒同士の調整も絆を深いものとしているようです。

今年度第一回の交歓会は六月に、養護学校五十七名、本校六十四名の生徒が参加して本校で行いました。

交歓会の内容は

1) 自己紹介タイム

2) ゲーム(歌っちゃおうゲーム、コーン取りゲームなど)

3) フリータイム(寄せ書き、お喋りタイムなど)

ですが、どの一つをとっても生徒たちが対等に交歓できるような、気配りがなされています。これを午後の二時間余りを使って体育館で行っています。体育館まで養護学校の生徒さんを案内するのも、段差や広さの問題で結構大変です。生徒たちは、移動補助の場所まで係分担しています。第二回目の交歓会は、十二月に養護学校にて同じ趣旨で行う予定です。

(二)の行事は家庭クラブが中心になって行っています。昭和五十五年から始まった行事なのですが、そのきっかけとなったのは、一人の生徒が国立療養所福島病院でおむつが不足しているのを知り、全校生徒に呼びかけたものでした。以来二十年、学校家庭クラブの中心活動の一つとして続けられ、一人一枚の布おむつを縫って寄贈する「一針運動」として定着しました。昨年度から男女共学となりましたが、男子生徒もおむつを縫って活動に参加しています。現在はさらしの布おむつを手縫いする人は少なくなっており、生徒たちは初めて作るおむつに興味を示しながら活動しています。

国立療養所福島病院訪問
国立療養所福島病院訪問

このようにして作られたおむつを持参して入所者との交流、洗濯場でのおむつたたみなどのボランティア活動を行っています。今年度前期国立療養所訪問には四十三人の生徒たちが参加して六月下句に行いました。施設が須賀川市にあり、経費等の関係でバス一台に限られているため、(参加希望は毎年増え続けているのですが)参加回数や進路希望で参加者を制限している現状です。

洗濯場でのおむつたたみ
洗濯場でのおむつたたみ

在学中に少なくても一度はボランティア活動をさせたい、そんな学校づくりを本校は目指しています。机上の学びだけでなく、実体験に基づいた学習が「生きる力」を育むと確信しています。特に本校の生徒は、福祉に対する関心が高いように思われます。年間二つの行事への参加定員は約二百人ですが、希望する生徒の数は、いつもそれを越えています。参加者は最初は不安であり、戸惑いがあり、積極的な行動が出来ません。それでも時間が経つと本当に和やかな雰囲気のなかで、行事が進みます。高校生がそんな体験をするのは、大切でしかも貴重なものです。生徒は構えて何かをするというのではなく、ごく自然なさりげない行動が一番大切なのだと気づくのです。

このような心をさらに育てるためにも、現在行っている行事を、今後も内容を充実させて続けていくことにしております。


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