教育福島0223号(1999年(H11)11・12月号)-019/48page
3) 授業担当教師側ですべての機器をコントロールできない。
(二) 簿記(二年間の継続)
授業では、約一年半で簿記の内容(簿記検定三級まで)を、残りの半年で実務的応用を行ってきた。
成果として、資格取得率が向上した。(全経簿記検定四級合格六名、三級合格二名)
今後の課題としては、次のようなことがあげられる。
1) カメラの位置の関係上、互いに相手校教室の様子を完全に掌握することが難しく、コミュニケーションが取りにくい。
2) 生徒はモニター、電子ボード、プリントのいずれかを見る授業となり、特定の形態をとらざるをえなかった。
(三) 合同LHR
「地域を知る・学校を知る」、「修学旅行について・実施して」のテーマで合同ホームルームを実施した。これにより、自分の学校や地域の様子を再確認することができ、さらに、自分自身で情報を吟味し、発信する能力や他人に伝達するための工夫を身につけることができた。
(四) 講演会
これまで、本校単独では著名人を呼んで講演会を実施することは難しかったが、清陵情報高校で行われた講演会に本校生がテレビ会議システムを通して参加することができ、自分の生き方を考える上で非常に参考になった。
(五) 生徒会交流
この事業の開始以来、両校の生徒会同士で交流を盛んに行っている。テレビ会議システムを利用した情報交換や話し合いだけでなく、南郷スキー場でのスキー交流や須賀川松明あかしへの招待などが実現した。また、清陵情報高校創立十周年記念式典にこのシステムを通して、本校生徒会長が挨拶するなど、両校の絆は深まった。
五 研究の成果
(一) 授業この事業により、生徒自身も、日常とは異なった環境の中で受講することで、小規模校独特のなれ合いの払拭につながった。へき地小規模普通高校においては制限されている教育機会の拡大につながった。また、清陵情報高校の専門教科担当教師による授業を受講することができ、教科への興味が高まったり、検定の合格率の向上がみられた。
(二) その他 合同ホームルームや生徒会の交流・講演会参加などを活発に行うことで、本校と清陵情報高校の交流が緊密になった。それだけでなく、本校の生徒の一般的な特徴である、「はっきり自分の考えを言えない」「初対面の人とのコミュニケーションが下手」などの点が改善された。また、テレビ会議システムを通した講演会などにより、生徒たちが得られる情報量が格段に多くなった。
さらに、交流を通して、両校とも自分たちの育った地域の自然・生活・文化を再認識する上でも役立ったと考えられる。
六 今後の課題
前記で述べたような成果をあげることができたが、同時に解決すべき多くの課題も明らかとなった。
(一) 設備
全般的に機器操作が複雑である。また、モニタリングの不備やハウリングなど音声面での不備が目立った。さらに、三台のカメラでは生徒の反応や表情・手もとの様子を十分にとらえられない。
(二) 授業
一時間の授業には両校五名の教員が必要であり、大きな負担となった。また、授業は火曜日と木曜日であったが、これらの曜日の授業の交換・短縮授業等が制限された。さらに、授業担当教師側ですべての機器をコントロールできない等のため、必要な情報がすべて授業担当教師側に伝わらない場面が多く、このため生徒側の教師にも簿記・情報処理技術の専門的知識が必要となった。また、授業のバリエーションが持ちにくいなどの問題も明らかになった。
以上のように課題は多い。しかし、これらの課題に応じた設備の改良・付加、操作の簡略化を行っていけば、学校間連携の一形態として、有効なものになると考えられる。また、通信費の軽減が実現すれば、より多くの学校での導入が可能となり、授業・生徒間交流への利用が飛躍的に増加すると考えられる。