教育福島0224号(2000年(H11)1月号)-041/48page

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心に残る一冊の本

心に残る一冊の本 心に残る一冊の本



心の豊かさ、心の広さ

県立平養護学校教諭

神田豊

神田豊

私は歴史物の小説が大変好きで、戦国や幕末などの激動の時代をたくましく、かつ、大胆に生きる主人公の姿に感動することがよくある。そして、そのたびに「自分という人間がいかに小さいか」ということに気付くのである。波瀾万丈の入生を送った主人公たちは、私に対して人間の生きざまを問いかけているのではないかと思えてならない。

今まで読んだ中で最も傑作だと思っている本は、司馬遼太郎作の「竜馬がゆく」で、作者は幕末の志士であった坂本竜馬の一生を実におもしろく、いきいきと書いている。

小さい頃は城下でも泣き虫の少年として知られていた竜馬が剣の道に目覚め、その修行を通してたくましく成長していく。やがて、尊皇攘夷運動の中で激しく揉まれながらも、師である勝海舟により目指す道を見いだしていく。そして、海援隊の組織、薩長同盟、大政奉還という形で、その目的を達成していったのである。

日本の歴史上偉大な業績を残したこの英雄は、人柄や性格も尊敬すべきものがある。それは、心の豊かさや広さと行動力である。身分が低い人に対しては対等に接し、身分が高い人に対してはけっして恐れることはなかった。また、誰もが我が藩だけを中心に考えていたのに、彼は日本の国家という大きな視点でとらえ、その信念のもとに行動していたのである。こんな心の広い人だったからこそ、誰からも愛され、すばらしい業績を為し遂げたのにちがいない。

近年、「心の豊かさや広さ」が提唱されている。このことは、けっして子供たちの教育だけではなく、教師として、人間としての私自身の課題でもあるような気がする。今の時代は竜馬が生きた時代とは異なってはいるが、混迷の時代である。彼の生き方を少しでも参考にしていきたいものである。

本の名称:竜馬がゆく(全八巻)
著者名:司馬遼太郎
発行所:文春文庫
発行年:1975年6月25日
本コード:ISBN4-16-710509-8〜710516-8




人が生きるということ


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