教育福島0225号(2000年(H11)2・3月号)-045/52page

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教育一口メモ

著作権法の概要及び解説


一 はじめに −著作権をめぐる動き−

「MP3」と呼ばれるインターネット上での音楽配信技術をめぐって、個人のホームページで公開した高校生が権利侵害で逮捕されたり、国語の副教材出版会社に無断掲載として出版差し止めを求める作家の動きがある等、著作権をめぐる事件が数多く見受けられます。

「MP3」の件は、著作権法で認められる私的使用の範囲を逸脱していることを理解していなかったことと、犯罪という意識が希薄だったことが要因として考えられます。

副教材の件は、教科書から転載する際に許諾を得ておらず、著作者からの許諾が不要である「引用」に該当するかどうかが問題となっているものです。

パソコンやインターネット等の急速な技術進歩と共に、「著作権」が身近なものとなり、知らず知らずのうちに他人の「著作権」を侵害していたり、自分の「著作物」が無断で使用されるという事態が生じています。


二 著作権とはどのようなものか

知的創作活動の成果である「著作物」(文芸・学術・美術・音楽などの範囲に属する人間の思想・感情を表現したもの)から生じる権利が「著作権」です。

「著作権」は何らの手続きを必要とせずに「著作物を創作した時点」で自動的に権利が発生し、大きく「著作者人格権」(公表権、同一性保持権等)と「(財産権としての)著作権」(複製権、上映権等)の二つに分けることができます。

前者は、一種の「人権」と理解されており、基本的には他人に譲ることはできません。

後者は、一般的に「著作権」と呼ばれているもので、利用を許諾したり、有償・無償で権利を譲ることが可能です。

これら「著作権」は、原則として創作の時点から著作者の死後五十年間までが保護期間となっています。


三 許諾なく著作物を利用できる場合

他人の「著作物」は、利用の許諾等を得てから使用するのが原則ですが、著作者等の許諾を得なくとも利用できる場合が「著作権の権利制限」規定として認められています。

教育の現場で関わることの多い事例としては、次の場合が挙げられます。

【私的使用のための複製】(著作権法第三十条)
個人や家族等限られた範囲で使用する場合には、本人が行う複製が認められる。
ただし、仕事等で使う目的がある場合には、適用にならない。
この場合、翻訳、編曲、翻案等も可能。

【図書館等における複製】(同第三十一条)
政令等で定められた図書館に限られており、高校等の学校図書館は含まれていない。

【引用】(同第三十二条)
公表された著作物は、研究等引用の目的上正当な範囲内で、引用を行うことができる。
ただし、引用する必然性があり、引用部分が明瞭に区分されており、引用される著作物は主従関係の従でなければならない。
また、出所の明示が必要とされている。
この場合、翻訳は認められるが、変形や翻案等は認められない。

【学校等における複製】(同第三十五条)
教育を担当する者は、授業で使用するために著作物を複製することができる。
ただし、複製を行うのは担当教諭に限られ、生徒の数を超える複製は認められない。
また、会議や研究会、生徒のクラブ活動等には適用されないので注意が必要。
テレビ番組を授業に使用する場合には、録画して使用できるが、授業での使用後図書館等に備え付けることはできない。

【営利を目的としない上演等】(同第三十八条)
営利を目的とせず観客から料金を取らない場合で、出演者等に報酬を支払わない時は、公表された著作物を上演・演奏・上映等をすることができる。
ただし、チャリティー等で収益を寄付する場合は適用されない。


四 これからの著作権をめぐる状況

今後とも、「著作権」を取り巻く状況は、ますます複雑化し、その対応が重要になっていくものと予想されます。

権利意識の高まっている現代社会において「著作権」を知ることは、無用なトラブルを未然に防ぐこととなります。

これからの教育現場では、より身近なものとなる「著作権」の普及啓発を図っていくことが必要になるものと思われます。


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