教育年報1956年(S31)-001/73page

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第一章総説
第一節
財政再建計画のもとにおける教育行政
の性格とその条件
昭和三十一年の教育行政をふりかえっ
てみるとき、その性格を大きく特徴づけ
るものは二つある。
一つは、地財法の成立とその適用であ
り、他の一つは新教委法の成立である。
よかれあしかれ、この二つの条件によ
って昭和三十一年度の福島県の教育行政
は規定せられたのである。
したがって、われわれは、まずこの背
景とその意味するものを丹念に調べあげ
る必要があると思う。
一、地財法の成立とその適用
いうまでもなく、地財法は、多年に亘
る地方財政悪化の現状に鑑み、今までに
発生した赤字を補損するため、再建債を
認め、明確な財政再建計画を樹立し、地
方公共団体の財政の健全な運営を促進す
ることをもって骨子とする。したがっ
て、再建計画の期間中は、地方公共団体
の長は、長以外の所掌する予算について
議会の指定した部分については、執行に
ついての協議を求め、また教育委員会の
二重予算の制度は停止する。またその期
間中は、自治庁長官は、団体の財政運営
について監査し、再建計画に適合しない
部分があればその部分の執行の停止を命
ずることができるという相当強い監督措
置がとられる。
五月の臨時県会は、本県が地財法の適
用をうけて財政の再建をする計画につい
て、議会の決議を得るためのものであっ
た。すなわち、実費約二十二億円に達す
る赤字を解消するため、歳入欠陥債十
九億五千万円と退職手当債九千万円を合
せ、二十億四千万円の再建債を発行する
ための措置を、自治庁に要請した。
この計画にもられている教育費の節減
ということがわれわれの問題である。と
ころが、教育費の大半を占める人件費に
ついて、この期間は児童生徒数の増減が
大きな波をうって寄せてかえす時期であ
る。これに伴う教員数の増減は不可避の
現象となってくる。すなわち、小学校に
おいては、昭和三十二年度から三十四年
度までは漸増の線を辿り、三十三年度を
ピークとし、三十五年度以降は次第に減
少している。中学校においては、これと
反対に三十三年度から三十四年度までは
漸減し、三十五年以後漸増して、三十六
度をピークとする。この児童生徒数に対
応ずる正常な教員数の確保が歪曲される
結果にならざるを得ない。
人件費がこのような状態になるという
ことは教育行政の基礎的な機能が停滞す
ることを意味する。
これが第一に挙げた財政再建計画下に
おける地方教育行政の偽らない現実であ
る。
二、新教委法の成立
昭和三十一年度の教育行政の条件を規
定するものの第二は、いうまでもなく、
新教委法の成立であろう。
県教育委員会も、従来の公選委員に代
って議会の同意を得て知事によって任命
せられた古張信二、角田林兵衛、苅宿俊
風、太田緑子、芳賀信平の五氏が就任さ
れ、新たな発足を迎えた。今度の改正で
何といっても大きなことは、支出命令を
含む財務事務について従来の自主的な権
限を失ったことである。
その意味から考えると、今度の新教委
法は地財法による暫定措置を恒常的な制
度にまで発展させたものということがで
きる。
新教委法は、県教育委員会にもこのよ
うな変化を与えたが、同時に市町村教育
委員会のすがたに大きな影響を与えてい
る。以下これについて述べてみよう。
「こんどの新教委任命については各地
ともこれをめぐって多少のいざこざがあ
った。………しかし、本県の場合、県教
委にしろ市町村委員会にせよ、ほぼ教育
の中立性は維持されたようである。この
点は多少の新鮮味は欠けてもだいたいに
おいて成功したといえる。しかし、問題
はむしろこんごにある。」これは新教委
制度の発足を論じた去る七月三日の民友
の社説である。多少のいざこざは別とし
て新制度が予定どおり発足したことは何
よりである。しかし、民友の社説が指摘
しているとおり、問題はむしろこんごに
ある。われわれはこの際問題の所在を冷
静に検討しなければならないと思う。
第一として、特殊の例外を除いて五人
制が置かれて合議制の執行機関としての
性格が維持されたことが挙げられる。学
校組合を含めて一二六の教育委員会のう
ち、一一一が五人制で三人制は僅か一五
に過ぎない。全国平均と比較してもよい
方である。われわれは、この結果が教育
行政の特殊性を確保し、教育の政治的中
立を貫くことのとりでとなることを期待
したい。
第二には、旧委員会との関係において
過半の委員会の過半の委員が更新され、
清新の気運が察知できることを指摘でき
る。旧委員から引続いて在任ずる委員の
全然ないところが三六を数え、引続いて
在任する委員が過半に達しない委員会数
は三九、結局七五の委員会において過半
の委員が更新されているということがい

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