教育年報1956年(S31)-002/73page

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えるのである。
第三には、教育長についてである。す
なわち、その前歴及び前々歴が殆ど教育
的専門職であり教育行政における専門性
を維持できる見とおしがえられたことで
ある。すなわち、前歴においてみると教
育長であったものが六三名を数え、校
長、教員であったものが十一名で計七四
名が教育専門職の経歴をもち、それ以外
でも一般行政の経歴をもっている人の就
任が多く、前々歴においても同様の現象
である。
以上指摘した点は今後の運営上発展の
条件として好ましい面であるが、果して
それをそのまま喜んでしまう材料にして
よいかについては問題である。さらにふ
みいって考えてみると、またいくつかの
再考を要する問題が浮びあがってくるの
である。
その第一は、委員構成にみられる老令
性である。第二は、教育長を含めて事務
局構成が極めて貧弱であり、常勤職とし
ての教育長の給与額についても非常識と
考えられる措置が若干みられることであ
る。
第三は、財務に関する事務委任の状況
においては殆ど委任または補助執行の措
置がとられていない委員会が半数近くあ
り、長との関係において委員会の地位が
極めて不安定となり、自主的な教育行政
運営について懸念されることである。こ
のいわば暗い面の問題点こそ本当の意味
における問題点であるo
したがって今後の運営上の問題点とし
ては、
1委員構成における老令性及び事務局
構成の劣弱性をどうして克服するか
2市町村長との関係において不安定な
委員会の地位をどうして確保するか
の二点に要約できることになる。
何といっても問題点の最たるものは、
事務局構成の劣弱性である。調査結果に
よる教育長を除く専任職員の一事務局当
り平均が人口段階別にはっきりしたかた
ちをとっている。五万以上が十三人以上
の職員を擁し、三万〜五万の段階におい
ては五人程度の規模となり、一万五千人
以下の段階においては一人または一人以
下の現況となっている。しかも一万五千
以下の段階に属する教育委員会の数は八
十八で総数の大半であることを考えあわ
せるとこの問題の重要性ははっきりす
る。たとえ五人制が維持できても、教育
長の専門職的性格が確保されても、事務
局のこの劣弱性では、到底教育行政の自
主的な運営を十分に期待することは難し
いといわねばならない。これをどうする
かは市町村教育委員会の最大の問題であ
る。
ここでわれわれは、教育委員会制度の
改革が論議の日程にのぼったとき、第一
の問題として教育委員会の設置単位の問
題がとりあげられたことを想いおこすの
である。町村合併の進歩によって町村の
行政能力が強化されたことは否めない
が、決して十分なものとはいえない。こ
の辺で地方教育行政における行政単位の
問題が教育行政の特殊性という観点から
と、一般行政との関係という観点から考
えてなおされてしかるべきものと思う。
例えば人口規模三万人程度を基準とする
教育全部事務組合方式なども一つの方法
として考えられるのではなかろうか。劣
弱性を補う暫定的な方法としては
1教育課程審議会(仮称)等を設置
し、教育課程及び教材教具の取扱等に
ついて校長及び教員の専門的な意見を
反映できる措置を講ずること
2社会教育については、社会教育委員
会及び公民館運営審議会等を徹底的に
活用すること
3教育委員、教育長及び事務局職員に
相互研修の機会を与え盗質の向上をは
かること
等が考えられる。と同時に町村会との連
絡提携を密接にし教育及び教育行政につ
いての長の責任を喚起することもまた重
要である。
結論的には、教育委員会の当面する劣
弱な条件を確認し、それが地方教育行政
の正常な連営を阻止する働きをすること
を極力防ぎ、プラスとなる条件を最大限
に活用して、バランスのとれた県市町村
を通ずる教育行政の発展を期したいもの
である。
第二節
風雪に耐えて教育委員会の努力はつづ
けられる
さきに述べたとおり、昭和三十一年度
の教育行政はくるしい条件のもとにしか
も辛棒強い役割りを与えられた。こうい
う状況下において教育委員会はどういう
努力を続けられたであろうか、これが次
の問題である。
一、うまれかわった教育委員会
−ある日の会議録から−
昭和三十一年度の大きなできごとは何
といっても「地方教育行政の組織及び連
営に関する法律」の成立である。本県に
おいても昭和二十三年以来旧法による教
育委員として福島県教育行政につくされ
た方々にかわって古張信二氏、角田林兵
衛氏、苅宿俊風氏、太田緑子氏及び芳賀
信平氏の五氏が選任された。
その新しく生れかわった教育委員会は
どんな活動をしているものだろうか。  

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