教育年報1956年(S31)-020/73page

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第四節指導要録の改訂にどのように対処したか
 文部省から「小学校、中学校および高
等学校の指導要録の改訂について」の通
達が出されたのは、昭和三十年九月十三
日であった。
 これによって、県教委としては、通達
の示す「案に基き、学校および地域の特
殊事情を勘案し、昭和三十一年度から、
改訂した指導要録を使用する」(注一)
こと、さらに「管内の教育委員会および
学校にこの通達の趣旨をじゅうぶん徹底
させる」(注二)ことが指示された。
 その後、学校教育課においては文部省
の「通達の要旨に基き、本県の実態を考
慮し、実情に即する」(注三)本県の指
導要録の様式を決定し、昭和三十一年二
月二十一日に、市町村教育委員会ならび
に県立学校に対して、教育長名の通知を
発した。
 その通知の要点を、つぎに転記してみ
るo
1 記入上の注意については、本庁学校
 教育課編「改訂指導要録の手びき」並
 びに「児童生徒指導要録記入上の注
 意」によること。
2 明年度から全学年同時実施になる
 が、既に在学するものについては、現
 行指導要録と併せ整備保管すること。
3 進学、転学の際における指導要録の
 送付及び保管については、学校教育法
 施行規則の一部改正をまって行うこと
 になること。
4 抄本の様式及びその取扱いについて
 は、前記「改訂指導要録の手びき」に
 よること。
一、「改訂指導要録の手びき」とそ
 の要点
 前記の教育長の通知にもうたわれてい
るように、この手びきは指導要録記入上
の注意を述べたもので、体裁は判二〇七
ページ、内容は十二章三十六節にわたっ
ている。そのうち特に学習・行動の具体
的な評価手続きと記入のしかたについて
は、多くのスペースをとって、相当詳細
に説明を施している。
 この手びきに示した評価法は、中央の
学者や教育諸雑誌等から「この種の刊行
物の中で最もすぐれたもの」等の評価を
得た。つぎに、その評価法の要点をあげ
てみる。
 まず「学習の記録」の「評定」につい
ては、基本的態度として、分析した項目
ごとの評価をなかだちとして、これを合
理的な手続きによって処理して、はじめ
て価値のあるものになることを強調し
た。さらに、各教科にわたって合理的な
手続きを述べているが、端的にいえば、
まず理解・態度・能力等の項目ごとに評
価し、これに一定の係数を乗じて総合点
を出し、この総合点に基いて五段階評価
をするという手続きである。項目間に比
重をつけ、係数を乗ずるというところが
特色であって、このことについては、文
部省の大内事務官(指導要録担当)は
「係数そのものについては、今後とも検
討してほしいと思うが、この行き方は最
も望ましいものである。」と評してい
る。
 五段階評価については「各段階にふく
まれる人数は、正常分配曲線による比率
にこだわるべきものではない。一つの方
法としては、五段階の人数の比率を一応
一〇%、二〇%、四〇%、二〇%、一〇%
とし、実際の人数の決定にあたっては、
これをめやすにしながらも実情に即して
修正を加えるというやり方が考えられ
る。要は機械的に処理するのではなく、
ある程度の幅をもって解釈すべきであ
る」(注四)旨を明示している。
 行動の評価については「評価の資料は
どのようにして集め、解釈するか」「評
価の具体的な手続きについて」「各項目
の意味する具体的な特徴について」(注
五)等の項目のもとに、評定尺度の具体
例や記入例等までを示している。
二、指導要録関係諸用紙の共同印刷
 ここで指導要録関係諸用紙というの
は、
1 指導要録の用紙
2 指導要録の抄本の用紙
3 「指導要録記入上の注意」
4 在籍児童生徒一覧表
5 検閲表
6 表紙
等であるが、これは県下一斉に共同印刷
することが、規格を統一する点からも、
また価格の点からも望ましいのではない
かとの意見が、主として校長会から出さ
れた。そこで学校教育課では印刷所に対
して正確な原稿を渡し、かつ校正を完了
したうえ、その後の運営経理等の一切
は、小、中、高等各校長会に委せた。た
だし、高等学校の用紙の様式は非常に複
雑をきわめたため、原稿の最後の整理
は、校長会の手で行われた。
三、質疑事項に対する回答
 以上に述べたような手順を経て、いよ
いよ三十一年四月から改訂指導要録が実
施され、各所で研究会がもたれ、また実
際に記入がはじまり、そこでいろいろな
質疑事項が提出されてきた。それらの質
疑に対しては、そのつどお答えはした
が、特に三十一年六月二十日付教育長通
知「小、中学校指導要録の記入取扱いに,
ついて」によって、当課の考え、態度を
はっきり述べることにした。つぎに、そ
の主な質疑事項をあげてみる。

―小、中、高校共通事項―
1 児童生徒の氏名の字体について
2 外部証明の場合、所見欄の「○、×」
 を記しないでもよいかどうかについて
3 旧指導要録から新指導要録に転記す
 べき事項があるかどうかについて

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