教育年報1957年(S32)-064/71page
遠く国外ブラジルや外人からの依頼が
あったことは、図書館参考事務利用度
の上昇を示すものである。現在の機構
では理想的な運営は望めないので係員
強化充の実を急ぐ必要がある。
(ハ) 学校図書館との提携
学校図書館法の制定をみたが、いま
だ過渡期のため期待するほどの成果を
望めない現状にあるので、学校図書館
と公共図書館との連絡を密にし運営面
についての指導助言をあたえその育成
に協力した。将来社会人としての図書
館利用者たる基礎をつくるべく学校側
との協力を惜しまず努力しているが、
問題は軌道にのるころ教員の異動、係
の配置転換等で成果をあげ得ないのが
実状である。
六、館外奉仕活動
館外奉仕の主なるものとしては、貸出
文庫、移動図書館、青少年巡回文庫およ
びこれらの成果を期するための読書会の
運営などであるが、これらは県立図書館
を県民のために公開されたものにする第
一歩である。
すなわち県民全般のための施設として
の役割を果すため、まづ第一に比較的文
化施設の恩恵に浴さない地理的・時間的
および環境上いままで図書館を利用する
ことのできなかった県下の農山漁村にも
できるかぎり図書利用の機会を与えよう
とするものである。
(1) 貸出文庫
貸出文庫は本館および六分館(郡山、
白河、会津、田島、平、相馬)で、管轄
区域をきめて県内の読書会・青年会・婦
人会・公民館・その他適当な団体からの
申請により一回三十冊程度、一か月ある
いは二か月以内の期間貸出を行い、それ
ぞれの地域の利用に供している。農山漁
村等比較的文化施設に恵まれない地方の
団体に対し特にその活用方を奨励してい
る。
(利用状況・統計および図表別表)
(2) 移動図書館
自動車文庫による移動図書館
「あづま号」は県内七十六か所の駐車場(別表)
に図書の貸出を実施しながら読書普及、
読書サークル、読書会の結成および育成
に対する指導助言、あるいは公民館図書
部の充実促進等を目標に巡回している、
従来の個人貸出を廃止し、駐車場を通じ
て社会教育関係団体を対象として貸出を
行うことに運営方式を変更した。
その変更した理由は、きわめて少ない
巡回回数で、最も少い図書を最も有効に
能率的に利用せしめ、そのかたわら読書
会の結成を促進し、かつ駐車場長係員の
貸出事務の簡素化をはかり、図書の所在
を明確にし、あわせて紛失を防止すると
ともに貸出の際の混雑を防ぐことにあ
る。
要は駐車場長ならびに社会教育関係機
関の組織網を通じ、読書普及をはかり読
書の効果を期待する
ものである。
(3) 青少年巡回文庫青少年の健全な発
達をはかるため主として読書にめぐまれ
ない地域を対象として青少年巡回文庫を
開設し、読書グループの育成、青少年団
体活動の促進に資しているが、本年度も
別表のとおり県内十六の県教育委員会事
務局出張所に配置、それぞれ管内を巡回
好評を受けている。
巡回の方法は前年とほぼ同様だが、箱
数を増してほしいとの強い要望があった
ので本年度は一出張所管内五箱に増し、
八十箱を編成して巡回を実施した。(別表)
県立図書館利用状況(昭和32年1月〜12月)
職業別閲覧者数 閲覧図書冊数 館内 館外 計 比率 館内 館外 計 比率 中学生 6,020 ― 6,020 9.55 総 記 2,112 149 2,261 3.49 高校以上 33,230 3,451 36,681 58.19 哲 学 1,717 611 2,328 3.59 教育家 261 272 533 0.84 歴 史 3,549 575 4,124 6.36 官公吏 1,325 2,645 3,970 6.30 社会科学 5,961 1,710 7,671 11.84 銀行・会社 1,021 1,439 2,460 3.90 自然科学 4,067 483 4,550 7.02 農 業 349 176 525 0.83 工学工業 1,621 228 1,849 2.85 商 業 281 392 673 1.07 産 業 996 214 1,210 1.87 工 業 697 330 1,027 1.63 芸 術 2,160 488 2,648 4.09 その他 338 293 631 1.00 語 学 2,455 226 2,681 4.14 無職・主婦 6,530 869 7,399 11.74 文 学 10,360 4,837 1,5197 23.45 児 童 3,120 ― 3,120 4.95 雑 誌 3,397 346 3,743 5.78 計 53,172 9,867 63,039 100.00 児 童 16,533 ― 16,533 25.52 計 54,928 9,867 64,795 100.00
(4) 読書会運営
読書率を高め、貸出文庫、移動図書
館、青少年巡回文庫の成果をより効果的
ならしめるよう常に読書会の育成指導に