教育年報1957年(S32)-063/71page
ち出すべきである。
四、その他、物品管理法の制定(昭和三
十一年五月)にともなう、図書館資料の
問題、すなわち図書の消耗品扱いにつ
いての館界の強い要望があったが、放
置しておくと事態は一層きゅうくつに
なりそうである。また強力なラジオ・
映画等の商業マスコミに対する対策、
ベストセラーをねらう商業的出版傾向
の濁流の中で読者の大衆化を図書館は
いかにすべきか。これら図書館界は解
決すべき多くの課題に直面している
が、結局図書館法の改正に集約される
面が多い。そして図書館法改正のため
には、その背景に図書館についての総
合計画(ナショナルプラン)が存在す
ることが望ましい。
以上であるが、いまや図書館界は広い
視野に立って全館種を総合した全体計画
像をもつことの必要にせまられている。
第二節県立図書館の活動をどう進めたか
県立図書館が各方面よりの強い要望に
対し昭和三十二年度予算の限られた規模
においてなやみながらも歩みつづけてき
た姿を次に述べる。
一、県立図書館庁舎の建築と体制の整備
多年の願望であった県立図書館がいよ
いよ福島市松木町一番地に建築されるこ
とになった。同時に現存する市公会堂、
公民館等は移築取毀して同敷地内に
福島市があらたに、市公会堂、公民館を建築
する。ともに昭和三十二年に着工してい
る。図書館が学術文化の向上のための施
設として、また図書館法第三条に示され
た奉仕活動の拠点として、建築と相まっ
て図書館業務の分析と編成、蔵書と利用
者層の分析と対策、分館、配本所、移動
図書館のサービス網等に再検討を加え、
年次計画的にこれが体制の整備を期して
いきたい。
二、県立図書館としての使命の適正化
県立図書館の一つの大きな使命は、単
なる公共的通俗図書館であるばかりでな
く、県内唯一の公共的参考図書館として
広く深く図書館資料の積極的収集保存を
図らねばならない。換言すれば県営のい
わゆる文化財の総合的収集保存センター
でなければならない。然るに当館の現状
は正しく世人の評の通り依然として
福島市立町書館的相貌を呈している。図書館
資料の面のみに限定しても特にその観を
余儀なくされている。すなわち一般専門
図書・参考図書・郷土資料等の大幅な充
実強化を図らねばならないゆえんであ
る。
三、県内全地域に対する図書館奉仕
県立図書館が県費運営の公共図書館で
あるかぎり、県内全域に図書館サービス
をおよぼすべきは当然であるので、分館
および貸出文庫、自動車文庫の充実を図
っていきたい。
四、青少年巡回文庫の実施
青少年の健全な発達をはかるため主と
して読書に恵まれない地域を対象とし
て、青少年巡回文庫を開設し、県教委事
務局を通じ県教委事務局出張所に連絡の
上、八十箱を編成して出張所に送付し、
読書グループの育成と青少年団体活動の
促進に資していきたい。
五、館内奉仕活動
奉仕の重点をどこにおき、どのような
活動をしたか。
公共図書館の性格上、利用者の主体は
常に一般成人に求めるべきである。
県立図書館においても依然として学生
利用者が圧倒的に多い現状にかんがみ今
年六月から八月にかけて、本館所在地居
住の一般成人が、どのような読書生活を
営み図書館に対しどんな関心を示してい
るかについての実態調査を各職種別五百
名を対象に実施した。その集計と評価
にもとづき公共図書館利用者層の分析と
対策を究明した結果県立図書館館内奉仕
係の在り方としては奉仕の重点を左記事
項におき、地域住民の健全なる読書に
よって、地域の文化向上、産業振興、生
活改善等に役立つ関係資料を整備し万全
を期すようにつとめている、今年は第一
回の試みでその成果はむしろ今後め努力
如何にある。
(1) 館外閲覧者の吸収拡大をはかる
各種資料の収集、蔵書構成に再検討
を加え、つとめて一般成人の求めに応
ずるごとく受入態勢を整え、また貸出
手続きの簡素化を検討中である。
(2) 参考事務(読書相談)の拡充強化
県下全般にわたる産業界発展のため
生産増強、生活の合理化等に寄与する
図書資料の紹介、これら関係事項の調
査、各種文献のあっせん等口頭・電話
・文書による依頼に応ずるため、参考
係の利用普及につとめた結果、文書に
よる依頼件数だけでも今年は昨年より
二十四件増加し、県内・県外は勿論、