教育年報1958年(S33)-038/83page

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 (1)市町村にも必ず社会教育主事および社会教育

 主事補をおくことにした。

 (2)附則第6項を廃して本文に入れて社会教育主

 事講習を重視した。

 (3)社会教育主事講習は,文部大臣の委嘱を受け

 さえすれば,大学でなくとも実施できるようにし

 た。

 (4)新に社会教育主事および社会教育主事補の研

 修をとりあげた。

2) 第13条の削除

3) 社会教育委員の任務

 (1)市町村の社会教育委員は,特定の事項につい

 て,助言と指導ができるようにした。

 (2)第19条を削除

4) 公民館の設置運営の基準

 (1)分館という名前を入れた。

 (2)文部大臣は設置運営の基準をつくるとした。

 (3)その基準にしたがって,国や都道府県は,市

 町村にたいして指導助言および援助に努めること

 とした。

 (4)主事という名前を入れた。

 (5)新に公民館職員の研修をとりあげた。

5) 公民館運営審議会

 (1)条例で定めさえすれば,2つ以上の公民館に

 ひとつの運営審議会をおくことができるとした。

 (2)第32条を削除

6) 公民館の補助

 (1)予算の範囲内で経費の一部を補助することが

 できるとした。

 (2)第36条を削除

 なお,この補助については,図書館法も博物館法

も同じ取扱いを受けることになった。

 その後参議院,衆議院において,次の2点の修正

をみた。

 (1)社会教育主事の講習は従来どおり文部大臣の

 委嘱をうけた大学が行う。

 (2)第13条は補助金を交付する場合,国にあって

 は社会教育審議会,地方公共団体にあっては社会

 教育委員の会議の意見をきかなければならない。

       ☆

 社会教育主事は,指導主事と等しく専門的教育職

員というが,その責務は少くとも次の3つの側面か

ら追求される。

 (1)公務員としての責務

 (2)研究者としての責務

 (3)実践者としての責務

 ところが最近,公務員としての責務だけを強く主

張する傾向がみられないこともない。そして,社会

教育主事自体もそれが正しい……あるいは安全な道

だと考える危険がないでもない。一般には,係長か

ら課長へ,課長から部長へ,そしてさらに上部につ

ながる縦の機構のなかが働くことだけが公務員の責

務のように理解されている。とてもそれだけでは社

会教育主事の責務は遂行されない。教育公務員特例

法をもちだすまでもなくて専門的教育職員はその上

に「研究」と「実践」とが要求される。

 くどいようではあるが市町村にも遅かれ早かれ社

会教育主事が必ずおかれるのであるから,わかりや

すい例をあげておきたい。

 病院の中で働く医者は,病院のさだめるところに

したがって,病院長の指揮監督下にある。このこと

は誰も疑わない。たとえ病院長が,外科出身の医者

であろうが,内科出身の医者であろうが,また事務

系統の人であろうが,その権限はまったく同じであ

る。ところが,医者は,小児科専門の医者もあろう

し,皮膚科専門の医者もあろうし,眼科や耳鼻咽喉

等のそれぞれの専門分野に属する医者がいるはずで

ある。これらの専門医は,勤務上の行動についてこ

そ病院長の指揮監督下にあるけれども,その専門分

野における医者としての診断や処置は,専門医自身

が責任をもたなければならない。たとえ不明の点が

あってそれを他の医者に相談するというようなこと

があっても,専門医としての権威と責任を完うする

ために,医者は常に研究と実践とを怠ることができ

ない。社会教育主事もこれと同じことである。

 だが,こういうことをいいつつ,社会教育主事に

は二重の苦悩がある。そのひとつは,医者を養成す

るためには立流な医科大学が全国あちらこちらにあ

るけれども,社会教育主事を養成する立派な大学は

ほとんどない。あっても5指にもいたらぬというこ

とである。もうひとつは,そういう社会教育主事を

専門に養成する大学を出ていない現在の社会教育主

事が,実際には社会教育に関する専門的職員になら

なければならないのであるから,夜に日についで自

ら勉強してもなおかつ充分にはいかないということ

である。一般の公務員なら,役所から帰ってマージ

ャンもよかろう,ゴマすりに歩くのもいい。油売り

も結構。大言壮語も,精神衛生上,大いに歓迎であ

る。だが,現職の社会教育主事には,自分が学んで

専門の道をきり開かなければならないという,そう

いう追いつめられた日々がある。

 こういう苦悩の中から,「1人の賢者の指導より

も,千人の愚者の協力を尊ぶ」という社会教育の原

則が生れてくる。市町村の社会教育主事も,府県の

社会教育主事も,口の先で「サークル運動がいい」

の,級の上で「小集団学習をすすめる」の,といっ

ている閑があったら,まず自分たちの学習サークル

を実践にのせなければならない。


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