教育年報1958年(S33)-067/83page
ない,これに比例割当法によって標本数を定め,標
本児童・生徒の決定には二段抽出法を用いた。
検査は2月24日に小学校,25日中学校について,
各出張所の指導担当者および研究所員はテスターと
して,テスト全般の管理・運営にあたり,学校長の
推薦したテスター補助員の手によって直接テストを
実施した。
テストに表われた各小間の正答率・標準化した換
算Tスコアーは“診断的性格を帯びた福島県で標準
化した学力検査の手引”―昭和34年4月上旬各小・
中学校に配布―に示しておいた。
b 誤答分析を通した治療のあり方
昨年度の標準化のための学力検査結果から,系統
的抽出法で約350の答案を抽出し反応分析を行った。
誤答については,これを各小間毎に類型化し,こ
れをその小間にたいする理解事項,作間の観点など
と対応させ,なぜこのような誤答をするに至ったか,
これらの児童・生徒にたいしてはどのような指導―
治療―を行うべきかについての考察を試みた。厳密
にはこの考察についての検証を必要とするのである
が,これは今後の研究課題にし,本年度は上記考察
の結果をとりあえず公けにし現場での活用に供する
ことにした。
“国語”については“診断的性格を帯びた福島県
で標準化した学力検査問題の報告書その二―国語学
習の診断・治療―”に纏めて発表したが,その意
図したものは次のようである。
各学年・学力検査問題の領域―読字・書字・語
い・語法・文章読解―にしたがって
(1)どんなところに,どのようなつまずきがある
か。
(2)そのつまずきは,どんなことが原因となって
いるか。
ということを細大もらさずとりあげ,さぐりあて
た。つまずきは
(3)どうずれば,その障害を除けるかを究明しよ
うとしたものである。
けれども「診断の終ったあとで治療がはじまるの
ではなく,診断そのものも治療指導の意味をもった
ものである」(平井昌夫)ためにとくに(2)のつまず
きをみることに力を入れたつもりである。つまり治
療指導の具体的な方法は,今後の現場での臨床的研
究にゆだねたわけである。
各領域で特に強調した点をあげれば
○漢字の領域では,一字ごとの音形義の面からの
学習と,文や語句との関連からの学習,
○語いでは,語いの機能,性質,内容に応じた学
習,語い拡充と適用のための学習
○文章では,読みのテクニックや要旨を読みとる
学習などについてである。
これらを小間ごとの観点からみて,(3)の治療指導
で考えなければならない問題点にふれたつもりであ
る。
一応学年別にまとめてはあるが,系統性というこ
とを考慮しているので,一つの領域を各学年を通し
て読まれることを希望する。
“算数・数学”は前述せるごとく担当者が病気の
ため報告書は次年度にゆずることにした。
B 非行傾向児の早期発見に関する研究
非行少年の数は年々その数を増し,またその年令
は次第に低下しつつあって,これが防止に大きな関
心がむけられている。こうした時代にあってこれに
応えるという目的から,広く用いている,性格・欲
求,環境検査などの結果を,非行防止の観点からど
のように解釈したらよいかを明らかにしょうとする
ものである。
この研究にあたっては中学校に研究員を委嘱し,
その研究員の属する学校の第1学年の生徒を教師の
日常観察を通して,非行児またはその傾向を有する
とみなされる順にしたがって順位づけたものについ
て,最初の1割に当る生徒を非行群に,これに続く
1割を除いた残りの8割から,無作為に非行群と同
じ人数だけ抽出してこれを正常群とした。
この両群に諸種の検査を実施して,これら検査に
含まれる下位検査―項目―で,両群の間に有意の差
のみられるものを選び,その項目への反応を正・負
で表わすためCutting Pointを決定した。これらの
項目群についてラザースフエルトの潜在構造分析を
行い,その結果において各項目の潜在クラス2―非
行とみなされるクラス―に表われる確率の,潜在ク
ラス1―正常とみなされるクラス―に表われる確率
との割合の小さいもの程,非行に関係が深いと解釈
する。またこれら項目相互の組合せ―反応型―では
潜在クラス2に属する人数の,潜在クラス1に属す
る人数の百分比の大きいもの程,非行への働きかけ
の大きい反応型と解釈して,これら項目,反応型に
非行への影響力からみた順位づけを行った。
この分析結果において,各反応型に属する理論度
数と実測度数との間に,かなりの一致がみられたに
もかかわらず,潜在クラス1と正常群,潜在クラス
2と非行群との度数を比べるときには,ここに大き
な相異がみられた。こうした現象は,正常群,非行
群の設定方法と,あらかじめ2つの潜在構造を仮定
するラザースフエルドの潜在構造分析によるものと
も考えられる。そこで潜在構造の数を仮定しないグ
リーンの潜在構造分析を試みた。
グリーンの潜在構造分析の過程におけるPoの因子
分析で,第2因子の剰余の度数分布は平均=-0.00