教育年報1958年(S33)-077/83page

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の点が多く,特に旧舎に至っては,全く望ましくな

い条件下にあった。けれどもこの悪条件を克服しな

がら,整備改善を図り,奉仕面の充実につとめるう

ちに,一方,新館舎の完成期も近づき,8月には移

転準備開始となった。そのため奉仕係の主力は,専

らその準備にふりむけられ,その余力をもって奉仕

に当った。何にしろ30年来の所蔵図書には,「ホコ

リ」も相当蓄積し,それを丹念に取払い,図書だけ

でも約8,000個の荷を数え,それを包装の上荷造り

をしたが,移転後の資料散乱をおそれ,特に事前の

移転計画は慎重を期す必要があった。幸い関係者の

理解ある協力により,新館舎の移転作業も順調に完

了したのである。

B 新しい館舎のなかで

 旧館舎,仮館舎時代は,利用者層の大半は学生生

徒で占められ,一般成人はきわめて少なく,館内施

設,環境,資料保管等は,図書館機能発揮に支障を

きたし,奉仕面にもこのことが反映し,利用者は毎

年減少してきた。そこで,これが対策として,利用

者層の読書生活,図書館利用についての実態調査等

を実施し,あるいは図書館自体の評価を図るべく評

価資料の作成などを試み,運営法に検討を加え,今

後の活動の基礎的資料とした。

 新館舎移転と相まって,奉仕態勢を整備したこと

と,館内環境が全面的に一変した関係で,利用者も

昨年12月と今年度を比較すれば,約2倍に増加した

が,依然として学生生徒が圧倒的に多く,一般成人

はわずかに1.5倍にすぎなかった。このことは公共

図書館の性格からみて,好ましくない傾向であるの

にかんがみ,一般成人の利用に支障をきたさないよ

うに一般成人席を特設し,一般成人の利用吸収拡大

を図った結果,1月および2月には昨年に比し学生

生徒の3倍増加にたいし,一般成人は2倍から2.5

倍に平行して上昇してきた。また図書館利用の認識

を深めるため,いわゆるP・R活動の一環として展

示室,自由読書室の施設利用をも積極的に奨励して

いる。

C 今後に残された問題

a 建物

 大部分の部屋が南面となっているため,冬季間は

室内に日光の直射をうけ,常にカーテンをかけねば

たらないので,快適とはいえない。また利用室の収

容能力を拡大してほしいとの要望が多いので備品の

充実とスペースの合理化をはかり,今後の運営には

これらの点をできるだけ補っていきたい。

b 周囲の環境

 敷地に余裕がない。市公民館の附属施設のごとき

感を抱くとの一部の声もある。

c 職員

 地域社会の人々は,増員に応じた奉仕を期待して

いるので,職員も決意を新に努力することを忘れて

はならない。

d 休館および開館時間

 休館日については現状でよい。開館時間について

は夜間閲覧を切に要望されているが,これは学生生

徒に多い。一般成人のために,開館時間を若干延長

してほしいとの要望もある。午後5時半閉館では,

一般成人の利用は土,日以外に利用する日がないと

ころがらみて,考慮する余地もある。月曜日休館に

ついては,職員および図書館運営面から考え,検討

を加える必要がある。

e 読書層

 学生生徒によって大半を占められ,一般成人では

無職,公務員,会社,銀行員の順序だが,無職はほ

とんどいわゆる大学受験浪人であって,この人々が

益々増加していく傾向にある。これは社会問題とし

ても考慮すべきことである。

f その他

 学生生徒の利用者の約40パーセントは場所の利用

にすぎず,図書資料は利用していない。この現象は

本県のみならず,全国的に共通したもので,この対

策も考えていかなければならない。

 以上を総合してみると,問題の本質はよりよい環

境で,何時でも自由に読みたい本を,より多く利用

できる図書館を地域社会の人々が望んでおることは

確かであり,また図書館本来の姿もかくあるべきで,

そのためにはどのような障害を克服していかなけれ

ばならないのか,常に研究と工夫を怠らず,近代的

図書館としての機能を充分果すことが,われわれに

与えられた課題であろうと思う。

旧館含,新館舎,利用状況比較表

月別,館別\項目別 学生生徒 一般人 利用册数 開館月数 一日平均
旧昭和32年12月 4,313 1,162 5,475 4,244 23 238
新昭和33年12月 9,387 1,814 11,201 11,491 24 467
旧昭和33年1月 3,536 1,195 4,731 3,890 20 237
新昭和34年1月 9,601 2,353 111,954 8,185 21 569
旧昭和33年2月 4,948 1,433 6,381 4,975 23 277
新昭和34年2月 12,286 2,701 14,987 8,425 23 652
新昭和34年3月 2,933 1,755 4,688 4,810 25 188
旧昭和33年3月 6,964 3,306 10,270 7,093 24 428


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