教育年報1959年(S34)-001/121page
§1教育行政
1総 説
昭和33年度教育行政の重点は,教職員に対する勤務評
定の実施であって,さらに有効適切な人事管理の資料が
得られるようになった。また,小・中学校改訂学習指導
要領が告示され,改訂教育課程研究協議会が活発にもた
れ,これらの実施も一つの重点となった。
昭和34年度はこれにひきつづき,勤務評定の円滑な実
施と,小・中学校改訂教育課程の研究の強化が一そう望
まれるようになった。
また,社会教育についても,年々普及啓発されてきた
が,世界の二大陣営の対立,わが国内の政治上の対立,
その他,政治,経済,思想上の不安定が社会教育関係団
体にも影響し,本来の教育の意味のものから著しく逸脱
して,政治的活動を指向する傾向が漸次見られるように
なってきた。
社会教育といっても,教育基本法の精神から逸脱すべ
きなにものもないことは,いまさら言うまでもない。教
育は,教育者,被教育者はおろか,それをとりまく第三
者であっても,政治的,経済的な利害打算によってその
本筋をみだすべきではない。そうしたことから社会教育
対象者をまもらなくてはならないと思うほど,その目的
についての認識にかけ,その本来のあり方を尊重しなく
なってきつつあるのが最近の傾向である。
以上のような情勢に対処するためには県教育委員会と
しては,市町村教育委員会,その他関係機関との密接な
提携により,教育行政の秩序を確立し,管下にある職
員,その他の服務及び活動の正常化を目ざし,教育に対
する地域住民の信頼感をかち得ることが最も緊急なもの
と考え,次にかがげる努力目標が樹立され,それに基づ
く活動がなされたわけである。
A 昭和34年度努力目標
a 県・市町村の一体化による教育行政の推進をはか
る。
国民から附託された教育の実をあげるためには,正常
にして円滑な教育行政を確立し,その機能を発揮させる
ために,いろいろな施策の推進が図られなければならな
い。
地方教育行政は県教育委員会と市町村教育員委会との
緊密な提携により進められなくてはならない。特に県費
負担教職員にあっては,任命権者が県教育委員会であ
り,服務の監督権者が市町町村教育委員会であることか
ら,このことが強調される所以である。最近,一部の教
職員への正常な服務が期待される世論が漸く大きくなっ
ている実情からも一そう望まれるところである。
b 児童・生徒の学力向上をはかる。
戦前と戦後の教育課程の構想がかわったことはあるに
しても,児童・生徒の学力についてはいろいろの問題が
論議されている現状である。全国学力検査,高校入試,
その他の検査及び調査の結果から見ても,本県児童・生
徒の学力については決して楽観を許せない状態にある。
これに加えて改訂教育課程の実施が目前に迫っている
ことに鑑み,児童・生徒の学力の実態をより適確に把
握し,それに応じた望ましい指導計画及び指導法を見出
し,もって学力の向上を図ることが要請されるところで
ある。一方,社会教育においても,青年学級,その他社
会教育関係団体等においていろいろの学習がなされてい
るが,それが生活の基盤に立って,着実に知識なり,も
のの見方,考え方なりの力が養なわれていくことも,近
時,必要欠くべからざることになっていることを確認す
べきである。
c 科学・技術教育の振興をはかる。
戦後,世界各国の科学・技術の進歩はまことに目覚ま
しいものがある。これらに対処して,科学・技術を大い
に振興させ,これを産業に,社会に,日常に,その他の
生活全般に及ぼし,世界各国におとらない次代の国民の
育成を図るべきである。
d 道徳教育,生活指導の徹底をはかる。
青少年不良化については全国的な問題となっており,
本県においてもその例外ではない。その原因となるもの
にはいろいろ考えられるが,究極のものは,その心理の
不安定と行動する価値の認識と反省の欠除が大部分を占
めるものである。また,特に戦後は,心理的な不安定を反
省もないままに,直ちに行動に表現することの可否を見
逃していたきらいがあった.道徳教育,生活指導の徹底
はこのような反省にたって行なわれなくてはならない。
e 社会教育の充実を期する。
社会教育の普及は,戦後著しいものがある。しかし,
自主的に活動することを中心に指導することはよいとし
ても,そのままでは,あまりにも形式的に流れすぎて,
会議中心となり,会の進行,運営等ばかりに走っていた
感があった。このような 「仏作って魂入らず。」の傾向
は,社会教育関係団体の活動のマンネリズム,形式化,
浅薄化,退屈なもの,魅力のないものとなり,何のため
に活動するかの反省がたりないために,日常生活とかけ
はなれた論議に陥り,社会教育の目的から逸脱した行動
に出やすくなり,いろいろの問題が提起された。
そこで,従来の実績と反省に基づき,日常生活から出
発し,日常生活にかえり,その反復によって,じゅん環