教育年報1959年(S34)-074/121page
この3点について管理規定を定め,又多くの学識経験者
より成る教職員結核等審査会の意見を基準として適切強
力な管理指導を行った。過去数年間の中には管理基準も
相当の変化をみせたが,現在では一応完成したと考えら
れるものが出来ているので参考までに下記しておく。
―(但し,復職のみの場合)―
〔肺結核復職判定基準内規〕
一定期間療養又は観察して活動性病巣を認めなくなっ
たもの。停止性病巣はあっても近い将来に再発のおそれ
のないもの,具体的には次の各項に該当するものを復職
可とする。
(1)胸部X線所見
a)浸潤及び空洞陰影をみとめないもの。
b)直径2cm以上の被包乾酪巣陰影をみとめないもの。
c)小範囲の硬化,線維化,石灰化陰影で1年以上安定
のもの。
(2)喀痰検査所見
喀痰(或は胃液)培養検査により毎月1回又はそれ以上
検査を行い,6ケ月以上に亘り陰性を継続したるもの。
(3)赤沈値
原則として正常値(1時間値男10,女15)と認めたる
もの。
(4)胸部理学的所見
呼吸音の変化著明でないもの。
(5)全身状態
栄養および一般状態可良又は普通のもの。
(6)手術後復職迄の期間
肺葉切除術,胸廓成形術,其他外科手術施行後は原則
として術後1ケ年とする。但し小範囲病巣切除後経過良
好の場合は6ケ月とする事がある。
新規採用に際しての基準は
(1)結核に罹患し,臨床的治癒と認定してから2年以上
経過しても,自覚的,他覚的に異常を認めないこと。
(2)結核の外科的治療を受けた者は原則として採用を認
めないこと。
(3)その他明らかに採用することによって,児童生徒の
教育上思わしくない疾病を有する者は認めない。
(4)赤沈値の異常亢進を認める者は原因を追求し,採用
可,不可を決定する。
以上の如く内規を定めて,それが実施を行った結果,
新規採用者からの発病は激減すると共に,休職,復職,
現職者についても徹底した結果,その経過も極めて良好
な者が増加し復職率が向上している。
C 結核性疾患に依る休職者の実態について
日進月歩の医学の進展により結核が容易に治癒する疾
患になった為に,又,一般のこの疾病に対する理解が深
かめられたことや,健康管理の実績が如実に挙がり,近
年とみに休職者の減少をみている。しかも驚くべき減少
の結果をみることが出来る。
第1,第2表はその実数を示している。
第1表休職結核教職員実数
男 女 計 小 学 校 65人 27人 92人 中 学 校 30 11 41 高等学校 43 16 59 計 138 54 192
第2表 年次別にみた結核性疾患による休職者数
区分\年度 29 30 31 32 33 34 人 人 人 人 人 人 男 221 257 212 137 124 138 女 139 111 82 62 50 54 計 360 368 294 199 174 192
※結核罹患年令平均は,
小学校,中学校共 36.5才に対し
高等学校に於ては 39.5才である。
※全休職者(結核および一般疾病)より見たる全結核に
よる休職者の百分率は(小学校においては59.4%であ
り,高等学校においては37.9%であった。又,県下
17,600名の教職員に対しての全結核休職教員の百分率
は1.0%であり, これは,全国平均より下回ってい
る。 (全国平均1.24%)
※地域別に見ると結核による休職者数は,中通り,会
津,浜通りの順に多く,大体人口密度および教員数に
比例しているようである。
※性別においては結核男子教員が女子結核教員に比し数
的に多いのは教職員数に比例している。
化学療法の出現と発達により,結核治療に非常な進歩
がもたされ,肺結核の経過は大いに変遷した。然し,治
癒機転については本質的には変りなく肺結核は従来と同
様長期間の療養により病巣の安定化と不活動性(inactiv)
化とに期待がかけられている。又,外科治療の急速の進
歩により,より安定な治癒状態或は殆ど遺残病巣を認め
ない程度に迄処置し得る様になった。
併し,休養者は種々な面で復職を切望し徹底的治療を
受けないでしまう傾向のあるのを否めない。これは休養
者自身の為のみでなく,社会的,家庭的にも由々しいこ
とであり大いに注意すべきことであるまいか。
D 一般疾病に依る休職者の実態について
教員の一般疾病に就いて,逐年的に見ても教員独特の
疾病を見出すことが出来なかった。疾病の種別を見ると
一般国民の疾病罹患と同様の傾向にあるが,唯一つ,精
神神経病罹患数が表3に示す如く全休職者の17.3%存在
する事は注目すべきことである。