教育年報1959年(S34)-092/121page
較しても,100点満点での予想平均点や,数学での問題
の質などに差異があるのでこの場合,素点のみの比較を
しても成績が向上したのか,低下したのかを判断するこ
とは困難である。
ここで昭和31年における本県の全国的な位置と本年に
おける全国的な位置とを比較して,その相対的な上り下
りによって成績の向上または低下を考えてみることにす
る。このような方法では,実際には本県の学力が向上し
ていても,その程度が全国の平均的な向上の程度より低
いならば本県の学力は低下したという結果としてあらわ
れて絶対的な学力の比較にはならないが,現段階として
はこれ以外に方法がないので,この方法を用いることに
する。
31・34年度の学力偏差値
小学校 中学校 高等学校全日 国語 算数 国語 数学 国語 数学 31年度 48.8 48.1 46.6 45.1 46.6 47.5 34年度 46.5 47.0 46.9 47.8 47.0 45.6
この表から学校種別間,教科相互間の成績は大体均衡
がとれてきたことがうかがわれる。次に学力の向上の程
度が全国の平均程度以上であるものは,中学校の国語,
数学,高等学校の国語で,中学校の数学は31年度の成績
が著しく低かったためその向上に著しいものが見られ
る。また全国の平均程度以下であったものは小学校の国
語,算数,高等学校の数学となっている。
c,今後の指導で力を注ぐべき点
学力調査のための問題は国語,算数,数学ともにそ
の学力を幾つかの領域に分けてテストとし,その領域毎
の成績を正答率―100人について何人が正答かを示す―
であらわしている。そこで本県の正答率を全国の正答率
に対する百分比,すなわち本県の正答率が全国の正答率
の程度まで到達したか―到達率―をもって領域相互の成
績の良し悪しを評価する指標に用いることにする。
国語の領域別到達率
小学校 中学校 高等学校 A聞くこと 83.6 85.0 95.0 B書くこと 90.9 89.6 93.1 C読むこと 80.5 96.7 92.0
算数・数学の領域別到達率
小 学 校 中 学 校 高等学校 領域 到達率 領 域 到達率 領域 到達率 数と計算 87.7 数と式 88.5 代数的内容 74.2 数量関係 82.4 量と測定 81.4 計 量 87.1 図 形 77.7 図 形 88.5 幾何的内容 67.9
〔国語〕 国語の三つの領域の問には何らの規則性もな
い。したがって福島県はでどの領域の指導について特に
注意しなければならないというような一貫したもので
はなく,したがって学校種別によってその指導のあり方
が異なるべきである。
〔算数・数学〕 小学校・高等学校は図形の成績が他の
領域にくらべて低い成績を示しておるが中学校は他の領
域と同じ成績となっている。
C 全国学力調査に関連させた生活調査
―学力と児童の生活との関係―
A,研究の目的
文部省が昭和31年以来,継続実施している全国学力調
査では,地域を1,大都市・中都市と2,1以外の市町
村とに大別し,更に2では市街,農業,山村,漁業,
山村の地域に分けて,地域と学力との関係をとらえてい
る。
これを昭和31年の国語,算数・数学の平均点につい
てみると,市街地域39.6,漁業地域34.5,農業地域
34.1,鉱業地域34.0,山村地域31.9となって,市街の
学力が極めて高く,山村は極めて低い。農業,漁業,鉱
業はその中間で,ほぼ一致した学力を示している。
このような関係は本県の昭和34年度全国学力調の結果
においても見られる。
1表昭和34年度全国学力調査の地域類型別の得点
市街地域 鉱業地域 農業地域 山村地域 国 語 49 40.5 39 30 算 数 41.5 37.5 36.3 25.5
学力の地域差の要因には,学校規模,文化度―都市
化―などがあげられているが,今回は児童の生活を取
り上げ,学力と生活との関係を明確にしょうとしたの
が,この研究である。
B,研究の方法
この研究が,学力を生活との関連のもとにとらえよう
とすることから,昭和34年度全国学力調査の小学校の標
本校について生活調査を行うことにした。
2表 地域類型別標本校・児童数
市街地域 農業地域 山村地域 鉱業地域 計 学校数 4 14 7 2 27 児童数 879 1,036 203 166 2,284
“生活の記録”には,放送文化研究所が“放送とこど
もの生活”調査に,静岡で用いたと同じ形式のものを用
い,学校及び地域社会で,特別の行事をもたない平常
な,しかも雨天でない適当な日を選んで,1日の生活
の記録を2回に亘って実施するよう,学校長に依頼し