教育年報1960年(S35)-099/135page

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点を考慮した学習指導を行なうことは,必ずよい結果を

もたらすにちがいない。 こういう意味で,学力検査問

題にあらわれた問題点は,学習指導の問題であり,その

子どものつまずきを救う方法が望ましい学習指導法であ

る。

 これらの国語,算数・数学の報告書は都合によって昭

和36年度に刊行する予定である。

B 望ましい学習指導法の実証的研究

a,目的

 「診断的性格を帯びた福島県で標準化した学力検査問

題」の実施の結果を誤答分析し,学習のつまずきを通し

て考察した国語科の「望ましい指導法」の実証的な研究

を行ない,国語科の学習指導法を確立し,児童生徒の学

力の向上を図ろうとする。

(1)研究は,国語の基礎的な能力となる「文字,語い,

ことばのきまり,読解」における指導法を主たる対象と

する。

(2)指導に当っては,改訂指導要領に示された項目,

A,聞くこと,話すこと,読むこと,書くこと,B,こ

とばに関する事項のすべてを内容とし,学習活動は,そ

れぞれ有機的総合的に展開できるように計画する。

b,対象学年および実験学校

(1)国語科としてのやや高度な態度や技能を必要とする

5年生として,小・中学校に通じる指導法を確立する。

(2)調査票に基づいて選定した学校を福島県教育調査研

究所規則第三条によって実験学校とし,実験の学級の担

当者を同規則第六条によって研究員とする。

 実験学校および研究員は次のとおりである。

学校 校長 研究員
信夫郡信夫村立平田小学校 渡辺英治 石原謙
〃         大森小学校 佐藤勝称 阿部冽
伊達郡飯野町立飯野小学校 阿部小平 鴫原盛寿
〃         青木小学校 寺島友吉 穂積彦司
〃   川俣町立鶴沢小学校 菅野秀夫 高橋勇雄
〃        小綱木小学校 渡辺吉治 大河原泰
〃        山木屋小学校 羽田隆治 中山実
信夫郡松川町金谷川小学校 武藤俊雄 今野剛光
〃     飯坂町中野小学校 本田仁一 伊藤利夫
安達郡安達町上川崎小学校 加藤昌三 曾山賢一

c,研究の方法

(1)年間指導計画,単元指導計画は研究所において作成

し,研究員が,その学習指導に当る。

(2)指導法の打合会は原則として毎月上旬に行い,学期

はじめは研究所で,その他は実験学校における研究員の

授業を参考としながら行う。

(3)研究員は指導記録をとる。

(4)実施にあたっては実験学校および研究員は平常の教

育活動をそこなうことのないよう考慮する。

d,仮説としての望ましい指導法

(1)現在の指導の弱み

 いままで行なわれた全国学力調査や診断テストで,あ

るいは授業の観察で次のようなことが指摘できる。

・文脈に即して語句の意味を読みとること,および文・

文章を相互の関係から読むこと。

・段落を正しくとらえること。

・問題意識をもって読むこと。

 こうした読みの操作で要点をとらえ,主題や意図を読

みとることに問題がある。

 子どもの受験や授業の態度では,問いを本文にかえし

て確かめること,および文(表現)に即したとらえ方を

することを疎遠にして,記憶を手がかりとして内容に反

応する。したがって,授業は教師の問いに従って内容の

あてっこをし,くみとったものの言い合いを展開してい

るにすぎない。

 この授業がいかに活発であっても自分で読みとる能力

が養われるのであろうか。 国語のねらいとするものは

「内容そのものの理解」というより,内容を「文・文章

のしくみやことばの働きから読む」という操作にある。

内容を理解できたということには,その後に適応する技

能は存在しないが,読みの手順がわかるということに

は,その後にじゅうぶん適応する能力が養われることに

なる。

(2)指導の構想―読解指導を中心として―

 文章を正しく理解するためには,作者の原体験を表現

の過程から追体験することがたいせつである。このため

には次のような過程の中で,次のような取り扱いが要求

されるものと考えられる。

1) 主題を仮定する。

 どんな長い文章であっても,全体像を見通すために最

後まで読まなければならない。そして,いったい「何が

書いてあるか」ということで全一的なとらえ方をする。

あるいは感想を求めることでもよい。子どもの発言を尊

重して,主題や意図を仮定するのである。この仮定は,

その後の読みの方向を決定するだいじな要素であり,読

み全体を支配する問題意識である。

2) 音読する。

 音読の意味はいろいろある。読解を目的とする場合,

正しい読み方を全員で確かめることにねらいがあるの

で,すらすらとじょうずに読めることまで強い要求は必

要ない。むしろ,読みの過程で語いがわからないため,

あるいは,文字がわからないため,または文節意識がな

いために読みの抵抗があるかどうかを判断するように考

えていくべきである。

3) 大意をまとめる。

 大意は5W 1Hを適応することがよいようである。

「あらすじ」「あらまし」がこれであって,要旨とはは

っきり区別したい。高学年であれば,わざわざ板書する

までもなく,段落わけと共に全体をとらえるようにする

ことを提唱したい。

4) 文章のしくみを考える。

 主題に従って,どのような構想で叙述されているかを



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