教育年報1960年(S35)-100/135page
調べることである。これは段落わけとして学習すること
にはじまる。
段落の指導を主目的とする中学年と,段落を意図をと
らえるための過程とする高学年では,指導の上でとらえ
方がちがってくる。中学年において形式的な段落から意
味やことがらのまとまりとして段落をとらえることに発
展し,高学年は主題の仮定を検討するために展開のしか
た(段落)を考えるのである。
5) 要点・要旨を読みとる。
段落をとらえて,その中のだいじな文や語を読みとる
ことは中学年のねむらいである。だいじな文や語をとら
えるためにはことばや文を主題との関係から考えなけれ
ばならない。つまり,問題意識を持って文章に接する
と,鍵になる文や語がはっきりする。これを意味の焦点
化というひともいる。
段落の要点をとらえたら,これを主題との関係からま
とめる。これが要旨である。まとめるという方法的な言
い方としては要約するともいう。
6) 主題・意図を読みとる。
構想・要点を読むことに支えられて主観がいっそう深
められる。意図は言語面にあらわれ,主題は行間にあ
らわれている。従って主題の場合は読者の主題が作用す
る。ここに「主観を通した普遍性を求める」ようなくふ
うが必要である。
(3)指導の留意点
読みを支えるものは, ことば意識であり,文意識で
ある。そして読みの方向を決定するものは問題意識であ
る。こうした意識を自分自身の問いとして,その答えを
自分自身で発見することが,読解を高めるだいじな要因
である。
このためには,教師の問い,板書などを,できるだけ
内容本位の考え方から脱却して,ことばの働らきを機軸
として展開するようにしなければならない。子どもの話
合いも・文に即して内容を得るために重要なことばの働
きを見つけることに焦点を置くようにしなければならな
い。
e,指導効果
これについては,目下検証中である。現在までの過程
では,「ことばに関すること」 「読解」「鑑賞」に有意
の差が認められるような見通しが立ち,「文字」「語い」
については顕著なものが見られない。
これは正味10か月に満たない実験であって教師の指導
法が安定した後の学力の向上に,むしろ期待するものが
ある。
C 全国学力調査(小・中学校の部)
a,調査の概要
(1)目的
この調査は,「小学校,中学校における児童,生徒に
ついて・いろいろの角度から見た学力の実態を全国的な
規模で明らかにして,学習指導,教育課程および教育条
件の整備,改善に役立つ基礎資料を作成することを目的
とする」と文部省より説明されてありますが,以上のよ
うな目的をもって実施される文部省の全国学力調査を,
本県としては次のような条件設定により,これを実施し
た。「小,中学校については標本校をもって本県の縮図
と見なして,学力の実態を明らかにする。」
(2)調査の対象・教科・標本・所要時間
標本の抽出には,小,中学校は学校規模に層化した
層化無作為抽出法を用いて抽出し,抽出された学校の全員
を調査対象とする方法が取られた。
調査の対象,教科,標本,所要時間
種別 学年 科目 対象校 テスト所要時間 学校数 標本人員 小学校 6 社会 30校 2,909人 60分 理科 30校 2,909人 60分 中学校 3 社会 18校 1,408人 60分 理科 18校 1,408人 60分 (3)調査の期日
昭和35年10月5日(水)午前中
(4)調査の方法
調査(テスト)の全般的管理,運営の任に当り,テス
トの厳正を期するため,教育調査研究所員,出張所員を
教育委員会がテスターに委嘱し,またテスト補助員とし
て,その学校より,児童生徒および教科に比較的関係の
少ない教職員を選び,テスト時間中 管理,監督を担当
することにした。
b,小・中学校調査結果
(1)個人得点の相対度数
種別\点数区分 0〜 5〜 10〜 15〜 20〜 25〜 30〜 35〜 40〜 45〜 50〜 55〜 60〜 65〜 70〜 75〜 80〜 85〜 90〜 95〜 計 小学校 社会 2.1 5.0 5.8 7.9 8.8 8.5 8.8 6.7 7.2 6.6 6.2 5.3 4.0 3.4 3.5 2.9 2.3 1.5 2.0 1.5 100 理科 0.2 0.4 0.4 1.3 2.6 5.0 7.2 10.3 12.0 11.9 10.2 9.7 6.9 6.4 4.5 3.3 2.7 2.2 2.1 0.7 100 中学校 社会 0.4 1.2 5.6 11.5 14.5 13.3 12.3 9.4 7.0 6.9 4.1 3.4 2.7 1.6 2.5 1.6 1.1 0.6 0.2 0.1 100 理科 0.5 0.4 0.4 1.7 3.8 6.8 13.8 14.6 15.9 10.0 11.0 8.0 5.1 2.6 2.4 1.3 1.1 0.1 0.1 0.1 100