教育年報1960年(S35)-102/135page

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みると,

◎35年度は小学校の社会が最も成績がよく,逆に中学校

の社会が最も成績が悪く,小学校・中学校の理科がその

中間に位置している。

◎32年度との比較では,小学校の社会が最も向上し,次

いで小学校の理科,中学校の理科の順に向上している。

中学校社会の35年度の相対的な尺度値が32年度のそれよ

り低いことは,本県の社会の成績の伸びが全国的な伸び

の歩調より遅かったことを示すもので,先の向上に対し

低下したということになる。

◎32年度においては,学校種別間,教科間とも成績が似

かよっていたが,35年度の成績ではややむらが見受けら

れる。

(2)教科内での成績

 文,部省の中間報告には,昭和35年度全国学力調査

―社会科・理科の実態―の1〜3頁にある,各教科の問題ま

たは小問についての“分野”“ねらい”を記し,これに

対する正答率が示されている。

 この問題または小問をその分野ごとにまとめて,分野

別に見た本県の成績を検討してみる。この目的のために

先ず国・県ともにその分野に属する問題または小問の正

答率の平均―単純平均―を求める。次いで県の分野別平

均正答率が国のそれにどの程度にまで到達し得たかを示

す指標として,県の平均正答率の国の平均正答率に対す

る百分比―到達率―を求める。

 小学校

  4表 社会科の分野別到達率

分野 地理的見方 交通 農業 工業 商業 歴史 道徳
到達率 93.1 82.6 91.9 89.3 88.0 92.0 93.1

 地理的見方と道徳の分野は共に到達率95.1で最も成績

がよく,次いで歴史,農業,工業,商業の各分野が続

き,交通の分野―国内の鉄道幹線および大都市の交通網

にかんする理解―が82.6の到達率で最も低い。

  5表 理科の分野別到達率

分野 生物 物理 化学 地学
到達率 98.1 87.5 90.8 101.1

 理科では地学―小石・砂・粘土のしずむ速さについて

の理解,雨量の測定についての理解,気温・地面の温度

・地下1mの温度・井戸水の温度などの変化や,それら

の間の関係をグラフから読みとる思考能力,風向計と風

の吹く向きについての知識,北極星の位置についての知

識,北天の星や星座の日周運行についての思考能力―は

全国平均を上廻っている。次いで到達率98.1の生物,97

.5の物理で,化学は到達率90.8で最も低い。

 到達率の低い化学で中では,二酸化炭素の性質につい

ての知識,実験結果から物の名前を思考する能力などは

相対的な成績が良いが,木材乾燥の実験についての基礎

技能,でんぷんとりの実験結果から性質を思考する能

力,せっけん水の油に対するはたらきについての理解な

どは,その相対的な成績が悪い。

 中学校

  6表 社会科の分野別到達率

分野 地理 歴史 地理・歴史 社会・地理 社会・歴史
到達率 88.7 84.1 77.5 38.1 83.8

 全般的に到達率が低い。なかでも地理・歴史の分野―

近代史の基礎的理解・東アジアの主要都市の発達と現状

についての理解―の到達率77.5,殊に社会・地理の分野

―日本の貿易についての基礎的理解と判断力,統計資料

を解釈する能力―38.1で極めて低い成績を示している。

  7表 理科の分野別到達率

分野 生物 物理 化学 地学
到達率 90.6 89.8 93.5 86.0

 中学校では地学の分野―鉱物の知識,地形図の理解,

天気図の読み方,星の日周運動と年周運動の理解―が最

も低い到達率を示している。理科の学習の基礎となる

 “単位の理解”の到達率95.4を除いては,化学の分野―

電解質,酸素製法の知識,中和の知識,酸およびアルカリ

に対する理解と判断力,実験に関する知識と判断力,

実験における危害予防に関する知識と判断力―が最もよ

い成績となっている。

 この中学校での地学の分野の順位の関係は,小学校の

それと全く逆な現象を示している。即ち中学校で末位で

あった地学の分野が小学校では第一位であり,中学校で

第一位であった化学は小学校では末位となっている。

(3)有意差の検定

 以上の考察は本県の全国学力調査における標本に表わ

れた結果に,ある程度の処理をほどこして得られた数値

についてであった。このことは,単に全国学力調査の対

象となった標本の成績についてではなく,その背後にあ

る県全体―母集団―を意識して,それについて話を進め

てきたわけでてある。

 しかしこの種の調査方法―標本調査―においては,1)

幸いにも標本が全く母集団の縮図となっている場合もあ

れば,2)標本の中に比較的よいものが多く入って,その

結果は母集団のそれより良い成績を示すことになり,3)

また逆に比較的悪いものが多く抽出されて,ために母集団

のそれより悪い成績を示すことが起り得る。

 したがって標本の結果を通して母集団相互の比較を行

なうには,このようなことを考慮した手続きをとっての

上でなければならない。

 ここでは今回の全国学力調査の標本の成績が,全国か

ら無作為にとった標本の成績とみなし得るかという立場

から検定する。即ち全国から本県の標本数に等しい数の

標本を無作為に取り出し,これに全国学力調査を実施し


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