教育年報1960年(S35)-105/135page
このような要求及び努力がどの程度達成されつつある
かは,今回のような調査からは検討できかねる。然し昭
和35年3月の卒業者-現役-と,それ以前の卒業者―浪
人―との各教科の小問に対する正答状況はこのことにつ
いてある程度何事かを物語ってくれるように思われるの
で,以下この点について検討を加えることにする。
“選抜のための学力検査結果の調査”の処理にあたっ
ては現役はその受験者の15分の1,浪人にその総べての
答案について反応分析を行ない,更に教科の各小問につ
いて,その正答率を求めた。
ここに得られた現役についての正答率は,15分の1の
標本についてのものであって,現役全員のものではな
い。それ故にこれを浪人のそれと直接比較してその大小
を論ずることはできない。そこで現役の15分の1の標本
の正答率から信頼度95%の信頼区間を設定し,これに浪
人の正答率が含まれる場合は,現役組と浪人組の成績は
等しく,区間の外で大きい方にあれば,浪人組の成績を
現役組以上,小さい方にあれば以下と判断する。
国語
30問のうち53.5%にあたる16問は浪人,現役共に同じ
成績を示している。浪人組が上位の成績であったもの
は,〔一〕ア書取,〔五〕2:語い,〔六〕1:俳句の
鑑賞とであるが, これらと同じねらいをもった〔一〕
ィ,〔五〕1,〔六〕2では逆に現役より下位の成績を
示している。このことから,特にどの領域のどのような
能力を見る問題において,特に浪人組が良い成績であっ
たということはできない。
現役に対する浪人の位置づけ -国語-
浪人<現役 浪人=現役 浪人>現役 〔1〕 2 〔5〕 3 〔1〕 1 〔3〕 9 〔1〕 ア 〔1〕 3 〔6〕 2 〔2〕 1 〔5〕 4 〔5〕 2 〔1〕 イ 〔6〕 4 〔2〕 2 〔5〕 5 〔6〕 1 〔3〕 2 〔3〕 1 〔5〕 6 〔3〕 3 〔3〕 4 〔5〕 7 〔3〕 8 〔3〕 5 〔5〕 8 〔4〕 〔3〕 6 〔5〕 9 〔5〕 1 〔3〕 7 〔6〕 3 社会
30の小問のうち,浪人はその20.0%に相当する数の小
問の成績が現役より悪く,逆に36.7%に相当する数の小
問においては成績がよかった。
成績の良いものは,〔2〕東南アジアの米産地に関す
る問題,〔5〕民主政治の組織と運営に関する問題,
〔9〕歴史上の事件の年代に関する問題など,知識的な
問題であり,悪いのは〔4〕日本の貿易―輸出,輸入―
についての,戦前(1934〜1936年の平均)と戦後(1954
年)のグラフ-4つの帯グラフ-を読みとらせる問題,
〔8〕月別発電量を示したグラフを読む問題など,比較
的高度の理解,思考力をみる問題である。
現役組に対する浪人組の位置づけ ―社会―
浪人<現役 浪人=現役 浪人>現役 〔1〕 2) 〔1〕 1) 〔6〕(1) 〔1〕 3) 〔8〕 (1) 〔1〕 4) 〔2〕(1)2) 〔6〕(3) 〔2〕(1)1) 〔8〕 (3) 〔4〕(2)1) 〔3〕(1) 〔7〕(2) 〔2〕(2) 〔9〕 (1) 〔4〕(2)2) 〔3〕(2) 〔8〕(2)2) 〔5〕(1) 〔9〕 (4) 〔7〕(1) 〔3〕(3) 〔9〕(2) 〔5〕(3) 〔8〕(2)1) 〔4〕(1) 〔9〕(3) 〔6〕(2) 〔5〕(2) 〔7〕(3) 数学
浪入組は僅かに1問―14―において,その成績が劣っ
たのみで,半数において現役組とおなじ成績を,残りの
14問は優れた成績を示している。これら成績の優れてい
たものは,〔1〕(1)〜(4),〔3〕(1)〜(3),〔4〕,〔5〕
(2),など,数・式の基礎的なもの及び〔9〕三角形の相
似,〔13〕〔12〕図形の性質,座標や式のグラフに関す
る基本的なものである。
現役組に対する浪人組の位置づけ ―数学―
浪人<現役 浪人=現役 浪人>現役 〔14〕 〔1〕(5) 〔7〕 2) 〔1〕 (1) 〔5〕 (2)1) 〔2〕(1) 〔8〕 (1) 〔1〕 (2) 〔5〕 (2)2) 〔2〕(2) 〔8〕 (2) 〔1〕 (3) 〔9〕 〔3〕(4) 〔10〕 (1) 〔1〕 (4) 〔12〕 〔3〕(5) 〔10〕 (2) 〔3〕 (1) 〔13〕 (1) 〔5〕(1) 〔11〕 〔3〕 (2) 〔13〕 (2) 〔6〕 〔15〕 〔3〕 (3) 〔7〕1) 〔4〕 理科
浪人組は15の小問において現役組より良い成績を示
し,2つの小問では成績が悪く,残りの13問では同じ成
績となっている。
生物,物理,化学,地学の領域別では,地学が6問のう
ち4問は現役組より成績がよく,次は生物が8問のうち
4問,物理が9問のうち4問,化学が7問のうち3問と
なっている。
現役組より成績の悪かった〔3〕は,熱容量の深い理
解―体積・熱・比熱温度相互の関係―〔4〕(2)は溶解曲
線についての理解,及び思考力を見ようとするものであ
る。後者のようなグラフを通しての問題解決は,社会の
場合にも見られたごとく,浪人組にはにが手であったも
のと思われる。
現役組に対する浪人組の位置づけ ―理科―
浪人<現役 浪人=現役 浪人>現役 〔3〕 〔1〕(2) 〔15〕(1) 〔1〕(1) 〔8〕 (6) 〔4〕 (2) 〔2〕(1) 〔15」(2) 〔2〕(2) 〔8〕 (7) 〔4〕(1) 〔16〕(2) 〔5〕 〔10〕(1) 〔7〕 〔16〕(3) 〔6〕 〔10〕(2) 〔8〕(2) 〔17〕 〔8〕(1) 〔11〕 〔9〕 〔8〕(3) 〔14〕 〔12〕 〔8〕(4) 〔16〕(1) 〔13〕 〔8〕(5) 音楽
浪人組は7つの小問において現役組より成績が悪く,