教育年報1961年(S36)-141/193page
5表 実験群と統制群,知能点および国語,算
数の成績
項目 知能 国語 算数 群 平均 分散 平均 分散 平均 分散 実験群 16.8 42.70 27.4 110.04 34.8 142.40 統制群 16.7 43.14 27.6 112.84 37.0 136.18 !知能・国語では分散・平均に有意の差が認められ
ない。
!!算数では分散に有意の差が認められず,平均でけ
著しい有意の差が認められない。
(4) 実験群と統制群の学習効果の比較
A 学期末の学力検査
第一学期末の研究所が作成した国語の学力検査問題
―小問数56―について,実験群と統制群の学力を検査
した。
6表 第一学期末の両群の国語の成績
郡\成績 平均 分散 実験群 27.6 92.05 統制群 28.6 87.84 第二学期末も国語の学力検査問題―小問58―を作成
して両群の学力を検査した。
7表 第二学期末の両の国語の成績
郡\成績 平均 分散 実験群 22.4 12.37 統制群 23.8 16.51 これらの結果をみるに,ともに実験群の成績が悪い
これは,教師・児童ともに旧来の指導法,学習方法と
の間に混乱を生じているがために,学力が高められな
かったことを示しているものと思われる。分散におい
ては第二学期の分散が小さくなっているが,これは優
秀な児童の内にもまだ十分学習の方法が身につかず,
従って十分な伸びを示していないことなどによるもの
と解釈される。
B 学年末の学力検査
学年末の学力検査はその客観性を高めるため,国語
の学力検査問題の作成を付属小学校に依頼した。
この検査問題の小問数は120でその正答状況は次の
ようである。
8表 (1)学年末の両群の国語の平均・分散
郡\成績 平均 分散 実験群 53.7 486.49 統制群 53.7 389.69 8表 (2)学年末の両群の国語の領域別の成績
郡\領域 文字の力 語句 ことばに関すること 読解1 読解2 (52) (21) (23) (12) (12) 実験群 19.4 11.7 12.1 6.5 4.5 統制群 19.5 12.2 11.7 5.9 4.3 実験群の平均がここではじめて統制群と一致してい
る。これは教師・生徒がようやく「望ましい学習」の
指導のあり方,および学習の仕方を身につけつつある
ことを表わすものといえる。ことに分散が増大してい
ることは学習のあり方が総べての児童に判ってきたの
ではなく,上位または中位の児童がこれを体得して除
々に学習効果を高めつつあるのに反し,下位の児童は
いまだにそれに到らず学習につまずきを示しているが
ためによるものと思われる。なお実験群の領域別の読
解1・2の成績がよいのは「望ましい学習」がその本
領を発揮し始めてきたことを示すものといえる。
「望ましい学習」第一年の結果は特にきわだったも
のを示してはいないが,これを持続すれば今後どのよ
うな結果をきたすかは,一応予想できるものと思われ
る。
3 昭和36年度の望ましい学習指導法
の実証的研究
(1) 目的
「診断的性格を帯びた福島県標準学力検査問題」の
実施の結果を誤答分折し,学習のつまずきから考え
られる,国語科の「望ましい学習指導法」の実証的
な研究を行なって,国語科学習指導法を確立し児童
生徒の学力の向上を図ろうとする。
とくに本年度は,次のことを主たる目標にする。
1) 「望ましい学習指導法」の具体化を図り,指導
例を,授業記録によって提示する。
2) 「望ましい学習指導法」の学習効果を検証する
(2) 研究のしくみ
1) 実験のための学年は,国語科としてのやや高度
な技能や態度を必要とする5年生として,小中学校
に通じる指導法を確立する。
2) 上記の目的に添うように学校および教師の諸条
件が同質に近い24学級を選定し,うち12学級を実験
群(A)に,他の12学級を統制群(B)とする。
3) Aの学級担当者を研究員として県教育委員会よ
り委嘱し,月一回学校持回りで当指導法に添った授
業の研究をしながら,次期指導の打合会を開く。
4) 指導法が定着する11月ごろ,一題材をとらえて
授業の記録をとり,子どもの理解過程を分折する。
5) 学習効果の測定は,5月に学力検査と知能検査
を実施し,AとBの児童の条件が均質になるように
整えて,学年末に他県の学力検査問題を用いて検証