教育年報1961年(S36)-142/193page
する。
6) 研究のための実験学校および研究員は次のとお
りである。
学校 校長 研究員 福島市 荒井小 緑川篤郎 大平光一 松川町 松川小 作山佐助 星裕次郎 〃 金谷川小 武藤俊雄 高橋敏朗 〃 水原小 田中政衛 渡辺麟一郎 飯坂町 平野小 佐藤厚友 菅野三男 〃 東湯野小 柳沼繁夫 小河伸也 吾妻村 野田小 内池幸吉 渡辺弘雄 〃 水保小 鈴木金佐 戸井田健 保原町 上保原小 安斎武 浅野栄 桑折町 半田醸芳小 五十嵐秀夫 寺島泰 〃 伊達崎小 内池謙三 市川多門 〃 睦合小 大谷香 佐藤健一郎 (3) 望ましい学習指導法
1) 本県における学力の問題
小学校の全国学力調査の国語科は,昭和31,34,36
年と3回にわたって実施された。この間の成績の推移
を学力偏差値(全国平均=50 標準偏差=10)に換算
すると次のとおりである。
昭和31 34年 36年 48.8 46.5 46.6 3回に現われた本県の国語学力の全国的な位置づけ
は,31年度を最高にして,34年度で低下し,現在まで
横ばいを続けていることがわかる。
さらに,国語科のどの領域に問題点があるのかを検
討してみると文部省では,問題を三つの領域にわけて
いるので,各領域の全国平均を100した場合,本県は
どの程度に全国水準に到達したか(到達率)を示すと
次のとおりである。
昭和31 34年 36年 農山村 純農村 普通農村 語い 92.1 聞く 83.6 95.4 86.9 91.3 表現 101.7 書く 90.9 94.6 87.0 94.6 読解 91.1 読む 80.5 92.7 86.1 87.5 本県は,31年度より「書く(表現)」の領域が比較
的全国水準に接近し,「読む」領域がとくに低くなっ
ていることがわかる。しかも,昭和31年度の傾向はす
こしも変ることなく持続し,全体として,そのままの
傾向を持っていっそう低下している。
これが,昭和31年度の「書く」領域の水準のままで
他の領域が高まるなら喜ぶべきことである。しかし,
34年度からは「書く」領域が低下して,他の領域との
差がちぢまったということで,ことさら「読む」「聞
く」の領域が「書く」領域の程度に向上したというこ
とは認められない。
ところで「書く」領域が高かったことをさらに検討
すると,次のとおりである。
昭和31年度
漢字 かなづかい 文法(副詞・接続詞) 104 101 95 つまり,到達率を高めているのは,とくに「漢字」
「かなづかい」のような,形式的に練習できる分野の
ようなものである。指導のうちで,高度な指導技術を
要する読解が低いということは,極論すれば,学習指
導法について,全国的な水準より,この方面の研究が
かなり遅れているということである。
このような問題点を,さらに児童生徒のつまずきか
ら検討したのが「診断的性格を帯びた福島県標準学力検査問題の報告書」
にもられたことであった。
そして,これを仮説として実施し,その効果を検証
するための方法的な研究を昭和35年にとりあげた。こ
の仮説の理論的な内容は「望ましい学習指導法の立証
的研究の報告書」において述べたとおりである。
2) 学習指導
昨年度の報告書では,どちらかといえば,一般化し
た形で理論的な立場を述べた。これは,学習指導法を
小手先のものとする考え方を否定して,あくまでも教
科の論理から出発すべきことを強調したかったからで
ある。
本年度は,この理論的な仮説を教材に即して,いっ
そう具体化しようとすることをねらいとした。指導に
おけるおもな留意点は次のようなことである。
ア こどもの読みの過程を考える
○ 読み手に目的意識を持たせる。
日常での「生活読み」は,生活の必要性から出発す
るので,はっきりした目的意識をもって文章に接する
したがって読み手は自分の必要から要点を明確にとら
えていく。
この方法は,学習においても考えなければならない
学習のねらいを見定めて読み手の心構えをつくる上で
だいじである。また,それによって読み手はどのよう
な手順で読んだらよいかも,しだいにわかってくる。
○ 読みの焦点を考える
内容は文章の叙述に従って,継時的に子どもに表象
されるであろうが,子どもにとって,文章は羅列にす
ぎない,何を読みとるかという焦点(目的)があって