教育年報1961年(S36)-144/193page

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4 学校差の要因究明

(1) 研究の目的方法

 これは,学校差の要因を究明して,学力向上のため

の指針をみいだすことを目的とした研究への方法的試

みである。

 児童の学力は個人的,生活的,教育的な諸要因の総

合の結果である。したがって学校を単位として働く,

教育的な諸要因の究明にあたっては,個人的,生活的

な要因のような教育的以外の要因については等質化さ

れていなければならない。

 そこで,ここでは同一の地域類型内に属する学校の

学力を知能検査の結果に基づいて修正し,しかる後学

習効果をあげているとみられる学校群と学習効果をあ

げていないとみられる学校群について,諸種の教育的

要因を比較検討する。その結果の両群の差が大きけれ

ばそれだけそれは学校差に強く働く因子と解釈する。

(2) 学力調査

 学校の学習効果の多少を表わす指標には,全国学力

調査の国語・算数の成績を用いることにする。

 調査方法は,学校は悉皆,児童は標本すなわち公立

小学校の本校および第6学年に在籍児童を有する分校

を調査の対象とし,在籍児童数の3分の1に当たる数

め児童を標本とした。学力検査は全国学力調査と同じ

期日に,同じ方法で実施し,実施後ただちに問題用紙

を研究所に届けさせ,研究所において採点・集計の処

理を行なった。

(3) 諸条件の調査

 1) 地域類型の調査

 児童の学力に働く,生活的要因としての地域社会の

生活様式および文化水準を,学校の通学区域の人口密

度,産業構造によってとらえることにした。これによ

る分類規準は文部省の全国学力調査および全国中学校

一せい学力調査における地域類型の分類規準に従った

 調査の結果に表われた地域類型ごとの学校の分布状

況は1表のようである。

   1表 地域類型ごとの学校の分布
項目\地域  1市街地域 2市街地域以外の地域
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
鉱業 工業 商業 住宅 その他 鉱山 漁村 山村 小都市 近効農 農山村 純農村 普通農 その他
実 数 6 3 18 14 12 9 3 37 27   192 215 88 25 649
相対度数 0.9 0.5 2.8 2.2 1.8 1.4 0.5 5.7 4.2   29.5 33.0 13.6 3.9 100

 2) 知能偏差値の調査

 学力の個人的要因として,知能的素質をとらえ,こ

れを知能偏差値に表わすことにした。すべての標本児

童に対して知能検査を実施することは,経費の面で不

可能であるためすでに学校において実施した,その結

果を求めることにした。

 これには,実施学年,使用した検査用紙の名称,お

よび全児童の知能偏差値を1点刻みにした度数分布で

報告を求めた。

 調査に表われた知能検査用紙は,田中式,教研式,

東大式で94.2%を占めている。

 残りの,5.8%には諸種の検査用紙があり,ともに

比率が少ないめでこれらは除外することにした。

 田中,教研,東大式の各検査用紙を使用した学校の

うちから,地域類型を考慮した系統的抽出法によって

30校を抽出し,さらにその学校の30名の児童を標本と

して選び,これらの児童の知能偏差値を調べ,6,

“目的に沿った統計的処理”のための資料とした。

 知能検査用紙および実施学年を不問にした地域類型

別の知能偏差値は2表のようである。

   2表 地域類型別の知能偏差値
項目\地域  1市街地域 2市街地域以外の地域
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
鉱業 工業 商業 住宅 その他 鉱山 漁村 山村 小都市 近効農 山村農 純農村 普通農 その他
知能偏差値 49.9 48.7 51.6 51.5 50.5 46.8 46.6 40.8 48.5   44.0 43.8 46.2 47.7 46.6
標準偏差 11.5 10.4 10.8 10.7 10.3 11.2 11.3 11.2 10.8   11.2 10.8 10.8 10.8 11.2
変異体数 20.3 21.4 20.9 20.9 20.4 23.8 24.1 27.5 22.3   23.4 24.6 23.4 22.6  


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