教育年報1961年(S36)-145/193page

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 3) 諸種の条件調査

 学校を単位として学力に働きかける諸要因について

は,文部省の“教育条件の調査票”によるものの外,

児童の学習に対する態度,習慣および家庭学習の時間

学校長の学校管理に対する態度,学校における教師集

団の人間関係,学校における現職教育のあり方などを

問題とすることにした。しかし,実際には全国中学校

一せい学力調査の事務に追われ,教育条件の調査票に

よるものの外は,サーストンの等現間隔法による学習

の態度,習慣尺度の作成のみで終ってしまった。

 したがってここで取りあげる教育的な要因としては

教育条件の調査票にあらわれたもののみである。

(4) 目的に沿っての統計的処理

 1) 全国学力調査による得点の換算

 全国学力調査のテスト結果の採点基準にしたがった

得点の県平均および標準偏差は,国語,算数によって

異なっている。すなわち測定具としての国語と算数問

題とはその規準が異なっている。したがって両者の平

均点の平均を用いるということは意味のないことであ

る,そこでこれらの得点を本県児童の3分の1の標本

の得点分布に基づいて換算Tスコーアとした。

 児童および学校の学力を表わす数値としては,国語

算数の換算Tスコーアの平均をもって表わすことにし

た。

 2) 知能と学力による相関分折

 田中・教研・東大式の知能検査用紙を使用した学校

ごとに地域類型を考慮して,それぞれ30校を抽出し,

さらに各学校ともその第6学年児童から30校の標本を

抽出した。これら標本についての知能偏差値と,全国

学力調査の得点から求めた換算Tスコーアの国語,算

数の平均点とを用いて,知能偏差値による学力の修正

他を求めることにした。

 ア 学校ごとの回帰の有意差

 学校ごとの“学力の知能に対する回帰直線”に差異

があるか否かを検討してみる。

 学校ごとの“学力の知能に対する回帰直線”の平均

による推定値の誤差,学校ごとの学力の知能に対する

回帰直線による推定値の誤差の総和,および各学校ご

との回帰直線のちがいによって生ずる誤差,とについ

てみると3表のようである。

   3表 1 田中式による推定誤差の分折
変  動  因 自由度 平方和 平均平方
学校内平均回帰からの誤差 666 24,545.8 36.86
個々の学校ごとの回帰からの誤差 644 22,700.9 35.25
学校ごとの回帰間の差 22 1,844.9 83.86

 F=83.86/35.25=2.379

  3表 2 教研式による推定誤差の分折

変  動  因 自由度 平方和 平均平方
学校内平均回帰からの誤差 695 25,660.5 36.92
個々の学校ごとの回帰からの誤差 672 23,009.5 34.24
学校ごとの回帰間の差 23 2,651 115.26

 F=115.26/34.24=3.366  

 3表 3 東大式による推定誤差の分折

変  動  因 自由度 平方和 平均平方
学校内平均回帰からの誤差 840 26,318.3 31.33
個々の学校ごとの回帰からの誤差 812 24,370.8 30.01
学校ごとの回帰間の差 28 1,947.5 69.55

 F=69.55/30.61=2.317

田中・教研・東大式の知能検査とも,学校ごとの回

帰直線のちがいによって生ずる誤差と,これら各学校

ごとの回帰直線による推定の誤差の総和とを比較した

結果は,F検定にみられるごとく著しく有意の差をも

って,前者の方が大きい。

 すなわち,これら各学校の学力の知能に対する回帰

直線は,同一の母集団からの標本とはみられない。し

たがって,個々の学校に対して,共通の回帰直線を適

用すると,推定による誤差が大きくなるおそれがある

しかし,これからの研究では,各学校の回帰直線の平

均的なものを用いて,その先の問題を考察してみるこ

とにする。

 イ 学力の個人的要因としての知能

 学力の児童単位の要因として,知能以外に学力に働

きかける要因が存在するか否かを検討してみる。

 まず,学校ごとの学校内での学力の変動の総和を個

人的な要因である知能に基づく部分と他の要因に基づ

く部分とに分折すると4表のようになる。

   4表 1 田中式による学力の変動分折
変  動  因 自由度 平方和 平均平方
学校内未修止の学力 667 44,771.1 67.12
回帰による減少 1 20,225.3 20,225.3
修正学力に対する誤差 666 24,545.8 36.86

 F=20,255.3/36.86=548.8


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