教育年報1961年(S36)-146/193page
4表・2 教研式による学力の変動分折
変 動 因 自由度 平方和 平均平方 学校内未修正の学力 696 51,244.0 73.63 回帰による減少 1 25,583.5 25,583.5 修正学力に対する誤差 695 25,660.5 36.92 F=25,583.5/36.92=692.9
4表・3 東大式による学力の変動分折
変 動 因 自由度 平方和 平均平方 学校内未修正の学力 841 49,524.9 58.89 回帰による減少 1 23,206.6 23,206.6 修正学力に対する誤差 840 26,318.3 31.33 F=23,206.6/31.33=740.7
児童相互の学力差を知能に帰因する部分と,その他
の要因に基づく部分とに分折した結果では,3種類の
知能検査とも,知能による部分が大きいことをF検定
の結果が示している。
このことは個々の児童の学力に,知能は他のいずれ
の要因よりも強く働きかけていることを表わすもので
ある。
ウ 学校単位の教育的な要因
前項によって,知能が個々の児童の学力の強力な要
因であることがわかった。
しからば学校間の学力差はその平均知能の相異のみ
によるものであろうか。すなわち,学校差に働く他の
学校単位の要因は存在しないのであろうか。次にこれ
を検討してみる。
まず,1)学校の枠をはずしてこみにした児童の知能
と,学力との相関に基づいた,学力の知能に対する回
帰直線による推定の誤差と,2)学校の平均知能と平
均学力との相関に基づいた,学力の知能に対する回帰
直線による学校単位の学力の推定誤差,3)各学校にお
ける学校内での児童の知能と学力との相関に基づいた
学力の知能に対する回帰直線による推定の誤差,とに
ついてみると5表のようである。
5表・1 田中式における共分散分析
変 動 因 自由度 平方和 平均平方 全 体 688 34,384.3 50.00 学 校 間 21 9,697.2 461.8 学 校 内 666 24,545.8 36.86 F=461.8/36.86=12.5285
5表・2 教研式における共分散分析
変 動 因 自由度 平方和 平均平方 全 体 718 30,713.2 42.78 学 校 間 22 3,996.7 181.7 学 校 内 695 25,660.5 36.92 F=181.7/36.92=4.9215
5表・3 東大式における共分散分析
変 動 因 自由度 平方和 平均平方 全 体 868 34,016.0 39.19 学 校 間 27 6,602.5 244.5 学 校 内 840 26,318.3 31.33 F=244.5/36.33=7.8040
学校の実際の学力と回帰直線に基づいて推定した学
力との差,すなわち学校の学力の推定誤差が児童の学
力の推定誤差より著しく有意の差をもって大きいこと
は,それぞれのF検定の結果にみられるごとくである。
これは,知能以外に学校間の学力差に働く学校単位の
要因のあることを示しているものである。
3 知能による学力の修正
2節の相関分折を通して,学力の個人的な要因とし
ての知能は他の個人的な要因よりも強く,また,学校
を単位とした教育的な要因が存在することを知った。
これがため学校間に働く教育的な要因を究明するに
は,それぞれの学校の学力をその学校の知能偏差値に
基づいて,修正する必要がある。
いま先の相関分析の素材となった,田中・教研・東
大式の学校のうち,東大式の分についてその修正値を
示すと6表のごとくである。全国学力調査の得点を換
算した国語,算数の平均点の順位と,修正値の順位と
を比較し,修正前の順位に対する修正後の順位の上り
下りの数をプラス・マイナスの数で示したのが表の右
端の欄である。
6表 東大式知能検査の結果による学力の修正
順位 学力 順位 学力修正値 順位 順位 学校番号 1 48.1 17 49.1 13 4 2 46.5 23 47.0 26 -3 3 58.0 3 53.0 4 -1 4 49.7 13 49.1 14 -1 5 48.6 15 48.3 18 6 45.0 26.5 47.7 21 5.5 7 51.5 9 51.1 9 8 45.0 26.5 47.6 22 4.5