教育年報1961年(S36)-159/193page
たが,2年66.3%,3年38.1%とかなり不安定なもの
である。選択肢の反応状況からみても,意味の切れ目
という意識が低いようである。
ことばのきまりについては,具体的な言葉の形や働
きについての意識,関心を高めることが必要である。
(4) 物語,小説類の文章の読解と鑑賞
・主題のはあくと鑑賞力
科学的文章の読解よりも正答率は高いが,表現に即
して主題をはあくする力が十分でない。表現よりも内
容だけにとらわれること,さらに内容を教訓的にとり
すぎることなどの欠陥が目立っている。
内容と表現の両面から調和のとれた指導をするとと
もに,感想を手がかりとした主題追究の指導にくふう
をはらうべきである。
・文脈の中での語句や文の意味や用法の理解
文芸的な文章の場合はとくに語句だけでなく文の意
味が重要なものとなる。このような観点からするとこ
の問題構成にはみるべきものがある。正答率は各問と
も50%以上であるが,指導上の問題をあげると語句や
文の細部にわたる理解を主題のはあくと関連づけるこ
とが足りない。また全体の主題の立場からさらに文や
語句の理解を深める指導が必要である。
(5) 文章の構成と読解
作者の考えを構想の上から読みとることはかなり困
難である。作者の意図や考えを読みとる力を高めるに
は,多様な学習のしかたを指導しなければならない。
文の続け方と組み立てについては,つなぎことばや
指示することばなどを手がかりとして理解できるよう
指導すべきである。
今回の学力調査は読解に関する問題が大半を占めて
いるので,この領域については信頼性が高いものとい
える。
読解力は福島県としても相当努力はして来たがまだ
多くの問題があるようである。その第一は,指導の効
果を高めるため学年の系統をおさえることが必要であ
る。これが不十分なために,中学校三年間の指導が効
果的なものとなっていないうらみがある。
つぎは指導の効果的な方法として,全体と部分(総
合と分析)を関連づけて指導を展開するということで
ある。多種多様な学習活動は,つねにまとまりをもっ
ているところに意義がある。
社会科
全国一せい中学校社会科学力調査の誤答分析を行
い,指導上の問題点を発見し指導法の改善に資するた
め考察をこころみた。各分野にわたって内容を細かに
見ると,各問題ごとにいろいろ考えさせられるものが
ある。
問題の内容は2年は,主として地理的分野から,3
年が歴史的分野を主としての出題である。
調査結果,本県の成績は,2年が43.2,3年が47.4
点であった。概していうと歴史的分野関係のものが,
地理的分野関係のものよりやや正答率が高い。もとよ
り正答率の高低は問題の難易によるもので正答率がそ
のままその分野の成績を表わすものとはいえない。
1) 地理的分野について
基本的事項に関する知識や理解,地図やグラフを読
む能力,総合的考察力などをみたのであるが,各問題
のねらいと,本県の成績は次のとおりである。
(問題のねらいと平均正答率表)
問題 ねらい 平均正答率 完全正答率 (1) ・縮尺の大きな地図における地図の記号と縮尺についての知識。 47.8% 2.1% (2) ・ヨーロッパのいくつかの国々の自然,産業,政治その他についての総合的な理解 35.5 1.4 ・各国の特色を比較考察する力 (3) ・日本のいくつかの工業都市の名称位置,特色についての理解 26.4 5.2 ・立地条件,変遷,歴史的背景などの面から工業都市の特色を把握する力 (4) ・ナイル川下流地域のおける気候,歴史的背景農業,開発事業,都市についての理解 47.3 7.9 ・気候に関するグラフを読む能力 (5) ・日本の諸地域の特色についての総合的で具体的な理解 35.9 6.0 (6) ・日本の主要輸入先についての理解。 40.0 13.3 ・統計地図を読む能力 (7) ・日本の農業の地域的特色についての総合的な思考力。 45.3 10.2 ・農業統計の帯グラフと円グラフを読む能力