教育年報1961年(S36)-160/193page
(8) ・原始,古代の生活様式や文化の特色についての理解。 (1)62.9 (2)52.5
42.9 22.6
問題(1)(4)(6)(7)がそれぞれ40%台の平均正答率で,問
題(8)は,57.7%の比較的高い結果であった。また,問
題(3)日本の工業都市の理解をみた結果は,26.4%の平
均正答率で好ましい状態ではない。
結果からみると,地理的事象の相互関連の理解にや
や難があること,具体的な統計グラフに基いて社会事
象を解釈する力の弱いことを指摘することができる。
また,基礎的事項である地図の記号を通じて,地形の
特色を把握する力,日本および世界のそれぞれの特色
を理解することに弱さがあるように思われる。
問題(1)は,縮尺の大きな地図における記号の読み
と,地形の特色を判断する力をみたのであるが,平均
正答率47・8%であった。この内容は地理的分野の学習
においてもっとも,基礎となることがらであるので,
期待をよせていたわりには,好ましい結果ではなかっ
た。とくに,完全正答率が2.1%であったことから,
この種の内容については今後さらに徹底を期さなけれ
ばならないと考えられる。
問題(2)(3)(5)(7)は,日本および世界のそれぞれ特色の
理解々みたのであるが極めて低い状態であり,総合的
に把握する力が不足しいるように思われる。このこと
から,断片的な知識にとどまっている結果であろうと
推察される。全体的にいえることは
ア 基礎的知識の習得が確実でない。
・地図上の各種記号と縮尺についての知識,および
地形の特色を判断する能力。
・わが国や世界の特色ある地名を知り,その位置を
地図上で指摘すること。
・統計グラフ,地図たどを読む技能たとえば,グラ
フ,統計,地図などをみて,必要な事項を正しく
読みとること,二つ以上の資料を互に比べて,そ
こから結論を導き出すことなどが十分でない。
イ 基礎的知識があいまいなために,重要事項に対す
る深められた理解がたりない。
たとえば,農業の特色,工業の特色等,地域の
特色を総合的につかむこと。
などが,調査結果からみていわれるであろう。
2) 歴史的分野について。
歴史的分野を主とした内容を出題したのが3年の問
題である。問題のねらいと平均正答率は次表のとおり
である。
(問題のねらいと平均正答率)
問題番号 ねらい 平均正答率 完全正答率 (1) ・古代中世におけるわが国の歴史的なことがらと中国との関連について考える力 38.0% 11.7% (2) ・いくつかの時代の文化の傾向と人物とについて関連的に考える力 42.3 14.6% (3) ・古代中世のおもな政治のできごとについての年代的な理解。 37.2 46.0
3.4 ・蒙古襲来がわが国におよぼした影響についての理解。 (4) ・わが国のおもな土地制度の改革の内容結果などについての理解 31.1 6.6 (5) ・地理上の発見やそのころのアジアの様子についての知識や理解 45.5 56.7
25.3 17.0
・歴史地図を読む力 (6) ・イギリス,フランス,アメリカにおける民主主義の発達についての理解。 55.4 70.1
16.3 37.2
・民主主義の発達の明治時代における特色と,その背景についての理解。 (7) ・明治以後の工業や貿易の推移についての歴史的理解。 42.8 46.2
11.9 29.4
・民主主義の発達と貿易の推移との関係を総合的に把握する力 ・帯グラフを読む能力 問題(5)(6)の平均正答率は,やや高くその他は,30〜
40%であった。詳細にみるとむらのある結果であった
ように思われる。問題(1)(2)(4)(6)(7)から,歴史の関連
的,総合的理解,発展的把握が摘確に深められていな
いことがいわれる。このことから重要事項の歴史的意
義を適確に把握する指導法の工夫が望まれる。
また,問題(2)のように,わが国の土地制度の改革を
関連的に理解することは,正答率が31.1%の低い状態
であった。このことから,歴史事象の時代的位置づけ
が正しくなされないことや,学習における年表利用の
不足があるのではないかと思われる。