教育年報1961年(S36)-164/193page
2) 既有の経験や知識を想起させ,一歩一歩確め高
める指導が適切になされていたか。
3) 記号を暗記しているだけの結果となっており,
生活に活用されないことが考えられる。
4) 事象について把あくさせるだけでなく,実際に
ついてのより具体的理解がふじゅぶんである。
5) 日常生活に関係する事項は,生活との関連を考
慮し,生活の中で反復されるようにくふうの必
要がある。
このようなことを,簡単に指摘することはむりかも
しれない。しかしここにあげたことは1例であり,誤
答の傾向など深く追究してみると,上記の問題点は考
えられることである。
これまで,結果をあげて問題点をみてきたが,この他
にも解答の間に矛盾のみられるものや,表の数値を
解釈して判断する抽象的思考力に問題点のみられるも
のもある。
更に重要なことでは,用語についても知識のあやぶ
まれることもみられる。胎生,恒温,溶解,鉱物,物質,
容器,断面図,作用,浸食,風化,たい堆等,第
2学年だけからみても,これらの用語がとりだされ
る。例はあげないが,このようなことの理解がないた
め判断に迷い,誤答する結果をまねいたと思われる生
徒のあることも考えられる。
いうまでもなく,浸食や風化等,正しく概念が形成
されなければならないものが多い。
このようにみてくると,今後の指導について,生徒
がよく理解していな用語を不用意に用いて学習が進め
られたり,すでに学習していることとして基礎的なこ
とがなおざりにされることのないように,系統性を重
視すると同時に生徒の経験や生活との結びつきをじゅ
ぶん考慮した指導が望まれる。
更に,実験,観察の指導においても,生徒の傾向や
能力にもとづき,適切な計画によってねらいとするこ
とが生徒にとらえられるように,また,抽象的思考力
や論理的思考力が高められるように,くふうされなけ
ればならない。
これまでのことは,一せい調査結果の考察について
の概要である。詳細については,今後に予定されて
いる報告書を一読いただきたいと思う。
また各学校においても,国や県のそれとの比較をと
おし,生徒の実態を適確にとらえて指導の改善をはか
ることが大切であると思う。
英語科
1) 調査結果の概要
調査の結果は,平均点において2年,59.6点,3年
56・7点と数値の上では他の4教科を上回る成績を示し
た。しかし,今回の問題がいずれも極めて基本的な能
力を測定する平易な問題であること,英語科における
PaPer testの限界ということを考えると,これを
もって直ちに良い成績であったと楽観することはでき
たい。
また各学年40問それぞれの正答率の間には大きな開
きがあり,正答率の最も低い問いに至っては18,3%と
いう成績である。さらに学校平均点の分布をみても最
高81点最低18点と学校間学力差の大ききいことを物語
っている。このような点から考えて,本県中学校英語
科には改善すべき多くの問題点があるといわねばなら
ない。各問題を領域別,ねらい別にわけて平均正答率
を示すと下表の通りである。
領域別,問題別正答率表
学年 領域 ねらい 小問数 正答率% 2年 聞く話す 67.3
1発音 4 51.5 2アクセント 6 69.7 3文のくぎり 4 79.5 読む 50.3 4語句の意味 6 52.2 5文の意味 6 48.4 書く 56.3
6文の転換 5 47.9 7句とう点 4 72.2 8語形の変化 5 59.1 3年 聞く話す 56.2
1発音 4 49.9 2アクセント 6 66.8 3文のくぎり 3 43.4 読む 65.6
4語句の意味 6 59.3 5文の意味 4 61.1 6短縮形 4 79.5 書く 46.9
7文型の運用 3 38.4 8文の転換 5 56.4 9語形の変化 5 42.6 これらについて概観すると,アクセント,句とう
点,短縮形など日常の学習活動の中で自然に身につけ
られる基本的なことがらについては,正答率も高く問
題はない。しかし英語学習指導の根本であり,とくに
重点的に指導されたければならない発音や文型につい
ての各問題の成績が悪いのは教科の目標に照らして問
題であるといえよう。
ここにあげられた平均正答率だけから考えると,さ
ほど問題もなさそうである。
しかし各問題の内部にあるいくつかの問い,おのお
のの正答率には大きた開きがあって,指導上反省すべ
きいくつかの問題点が指摘できるのである。
そのすべてについてここにのべることは紙数の制約
上できないことであるが,結果の分析を通しての本県
中学英語科学力の問題点としてまとめると,つぎの諸
点になる。