教育年報1961年(S36)-165/193page

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ア 生徒の弱点は音韻,語形,語順のいずれの場合で

  も,日本語と英語の異なっている点にある。

イ 語形の変化や機能語が文と,結びつかないままに

  項目的におぼえられている。

ウ したがって文の構造を無視して内容語の意味の関

  連から解釈し,配列の特性から判断することがで

  きない。

エ 教科書以外の英文を読む力がついていない。一文

  一文はわかっても全体として意味がつかめない。

オ 平叙文を作る能力にくらべて疑問文を作る能力

  がはるかに低い。中でも発問能力がついていな

  い。

力 とくに助動詞を用いる疑問文,否定文を使用する

  力が不足している。

キ 基本的な語い,文型,文法の理解とdrillが不足し

  ている。

ク 日常の学習に暗記,暗踊がなおざりにされている

  傾向がうかがえる。

 以上であるが,その中でも1.2,および5,がとく

に目立った欠陥として考えられるのである。

2) 今後の指導の重点

 前項でのべた問題点を解消し,中学校英語教育の実

をあげるために,今後の学習指導において,われわれ

は言語のいかなる面に重点をおくべきなのだろうか。

 「新しい言語を学習するということは新しい一組の

習慣を身につけることである。」といわれるように,

語学教育の第一次的な目的は,その言語的習慣を反復

経験することよって,日本人として可能な程度まで正

確に聞き,話し,読み,書く能力を身につけさせるこ

とである。ある外国語の体系に関する知識を与えるこ

とではなく,習慣として身につけさせることなので

ある。

 本県生徒のweak pointは音韻にしろ,語形,語

順にしろ,この言語習慣の相違による困難点と一致し

ている。また言語の本質が音声言語にあることを考え

ればわれわれの学習指導において重視すべきことは

「反復練習」であり,学習活動の重点は「発音」と

「文型」の練習でなければならないといえよう。

 それは,音声が第一義である言語教授において入門

当初から細心の注意をもって完ぺきを期す指導が望ま

れるのが発音であるからである。また,外国語が母国

語の場合と同じように,一定の型にはまって自然に出

てくるようにするにはその言語特有の型(patterns)

を習慣的行動になるまで反復練習しなければならない

からでもある。

3) 発音指導の留意点

 今回の調査結果にみられた問題点から,今後の指導

においては,とくに日本語と英語との音声組織が異な

るところがら生ずる発音上の困難,点に指導の重点をお

くべきであるが,さらに留意点を列挙すれば,

ア 母音については,日本語のカナの5つの母音に変

  えて発音するくせを矯正すること。

イ 子音については,子音のあとに母音を無意識に入

  れて発音し,その位置にアクセントをおくことさ

  えあるから注意を要する。

ウ 発音の区別ができないことから,意味の混同をお

  こしていること,ローマ字読みの誤りなど初期の

  うちに正しく矯正しておくこと。

エ 日本語化している英語は学習上の一つの障害であ

  るが,これを正しい発音とcontrastさせて指導

  することは,英語の音声組織への導入をはかるの

  に有効な方法である。

オ 発音練習においては,無意義の単音を練習資料と

  するよりも,独立した単語によって行なうのが

  良い。

カ 発音法則の指導,発音記号の併用,綴りと発音と

  の関連など,生徒の実態や必要に応じて考慮する

  こと。

 音声面の指導はいかに重視してもしすぎることはな

いし,またそれだけにむずかしいものである。結論的

には,正しい発音を数多く聞き,たびたび発音して一

つ一つを確実なものにしていく以外に手はないといえ

よう。それにはまず指導者自身が正しい発音を身につ

けることが先決である。つねに機会をとらえて自己の

発音の練磨に心がけ,とくに指導者を得られない所に

あってはレコード,ラジオなどと理論書とを併用して

練習することが必要であろう。

4) 文型指導の留意点

 英語学習において単語の学習も,文法規則の解説

も,それは文を学習し,文型に習熟する手段と解し

て,重点を基本的な文型の運用の習熟に向ける必要が

ある。

 今後は指導要領にも各学年で指導すべき文型が具体

的に明示されていることでもあるので,計画的,継続

的な指導が望まれるのである。

 基本的に英文は,Sは+Vするであり,他の要素は

つねにこれに後続することをしっかりのみこませるべ

きである。そして最も重要な動詞の使用(位置・語

形)を徹底的に教えこむことである。口だけでなしに

 Writing も大いにやらせることである。

 Pattern Practice の中でもとくに substitu-

 tion の技術を駆使して効果をあげることを望みた

い。

 さらに留意すべき点を列挙すると,

ア 語い,文法事項,文型を一本化した文型指導計画

  を作成すること。

イ 暗踊,書き取りを重視し継続的に行なうこと。

ウ Pattern Practice は口頭練習を生命とするた

 めにとかく書くことがおろそかにされやすいので書


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