教育年報1962年(S37)-150/169page
でたっても「学生図書館」になってしまう。
われわれのサービスの「主なる対象」は,社会教育法
に示されているように,勤労に従事している成人および
青少年と考えねばなるまい。そこで昭和37年度は,勤労
青少年を含めて一般成人による利用者の増大を目標とし
て,努力してきた。その結果は,館内奉仕および館外奉
仕の分野で明かにされるはずである。
対象の問題では,このほかに福島市民だけでなく,も
っと県内の隅々にサービス網をひろげたいと願い,その
第一手段として分館活動を俎上にのせた。その結果は下
記の「答申」となって,かなり明瞭な形で改善の道を得た。
昭和37年11月8日
福島県立図書館長 桑原善作殿
福島県立図書館協議会議長 横井政吉
同 副議長 石黒明正
分館活動を活発にする方法について(答申)
当協議会は,福島県立図書館の分館活動を活発にする
方法について,館長から諮問を受けたので,第1回は昭
和37年7月19日および20日の両日,第2回は昭和37年11
月8白,以上2回にわたらて協議会を開催し,慎重審議
の結果,次のとおり答申します。
記
1 県教育委員会に対する要望
つぶさに県立図書館の分館活動を検討して見ると,名
実ともに図書館としての形態をととのえている分館の
みが,やや活発な活動を展開しくいるほかは,いまだ図
書館としての機能を充分に発揮できないでいる分館があ
る。したがって,これらの分館の所在地である市および
町に対して,昭和38年度から順次,「図書館法施行規
則」の示す最低基準を下廻わらない図書館の建設を進め
ていただくよう勧奨し,あわせて建築費の3分の1は県
費をもって補助されるよう要望します。
2 県立図書館長に対する答申
1) 分館の活動を含めて,県立図書館の奉仕組織およ
び内容を充分PRすること。
2) 分館に配布する図書館資料の増加をはかること。
3) 分館活動の主なるものは「貸出文庫」であるが,
この「貸出文庫」の運営について改善を加えること。
4) 「貸出文庫」の利用者である読書グループの育成
につとめるよう,市町村に対して常時働きかけること。
5) 分館には専任の県職員を配置するよう,関係方面
に働きかけること。
6) その他,分館活動活発化に対する施策を検討のう
え,実行可能のものについて早急に対処すること。
なお,以上の6点については,別紙のとおり,内容
説明書を添付します。
(別記)
県立図書館長に対する答申の内容説明書
1) 分館の活動を含めて,県立図書館の奉仕組織および
内容を,充分PRすること。
県立図書館の分館が「どこに在って,どういうサービ
スを行なっているのか,」一般県民の大多数は分ってい
ないように思われる。社会教育関係団体の幹部に例をと
って見ても,年々新しい幹部が就任するために,過去の
幹部は分館のことを知っていたが,現在の幹部は知って
いないという実例がある。ことばを換えていうと,以前
はPRしたが今日ではほとんどPRしていないのではな
かろうか。
PRの方法としては,いろいろあると思うが,何とい
っても県教育委員会事務局出張所長会議とか,社会教育
主事会議とかそういった出先機関の方々の会議を通して
PRしてもらうこと。および県立図書館の分館長(司書
員も含め)もまた分館の所在する県教育委員会事務局出
張所に関係のある職員であるという認識をもっていただ
きたいし,またそれにふさわしい処遇も忘れないでいた
だきたい。こういう積み重ねがあって初めてPRも浸透
してゆくものと考えられる。殊に分館活動の中心をなす
貸出文庫の利用者は,市町村における社会教育施設……
…つまり公民館と,社会教育関係団体である青年会とか
婦人会とかPTAの方々であるから・これらの指導の任
にあたっておられる県教育委員会事務局出張所に期待す
るものが大きいわけである。
2) 分館に配布する図書館資料の増加をはかること。
分館に送られる図書館資料は,いわゆる「一般図書」
であって,軽い教養書からベスト・セラーになるような
ものまでを含み,少なくとも「基本図書」とか「専門図
書」と呼ばれるものではない。これは飽くまでも,広い
読書層の開拓を目的としているものであって,そのため
に県立図書館の司書のほかに,民間から下記の10氏にお
願いして,新刊書の選定を実施している。したがって,
内容については,大体において異議ないものと認める
が,その量については問題がある。