教育年報1963年(S38)-159/180page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]

県立図書館

 第1節 概  要

1 は じ め に

 県立図書館は何をなすべきか,県立図書館とは何をす

るところなのか,といった問題が各種研究集会等で繰り

返し,繰り返し論じられてきた。殊に図書館内部からの

疑問は,本来「県立図書館はかくあるべし」と描いてい

る県立図書館像が,予算,施設及び人員などの制約か

ら,容易に実行し得ない現状であり,これに対する焦燥

と困惑からくる自己の内部からの自然発生的な疑いであ

ると思われる。また外部からの疑問は,図書館とはいい

ながら,市立図書館より予算を若干多く持っているだけ

で,県立のやっている事業は市立と大差ないではないか

といった県立に対する批判から生じてくる疑いである。

このような県立図書館の経営は多分の問題点をかかえな

がらも,本県の県立図書館はその面目を保ちつつ,その

年,その時の図書館の施策に呼応し,事業の振興を期し

て限られた予算と人員及び施設のもとで精いっぱいの努

力を傾注して歩んできた。すなわち新館建築後は,管理

面では諸規則の制度化を図り,事業面では特に館外奉仕

活動に力を注ぎ,貸出文庫,巡回文庫,ブックモビール

等による読書普及の振興を図った。館内奉仕においても

資料の整備と読書設備の整備を始めとし各種図書館普及

文化事業として資料展,鑑賞会,読書会等の開催,また

調査相談の啓発等,図書館としてなすべきものは総てと

り行なってきたところである。しかし,このとり行なっ

てきた各種事業が本県の地域性に,果して適合している

ものであったのか,また適合したものであったとすれ

ば,これでじゅうぶんであったのか,欠けている点はな

かったか,といった従来からの図書館経営並びに事業面

に対する反省と,この反省に立っての将来への足がかり

をつかもうとすることが,昭和38年度の大きな一つの課

題であったと思う。その試みとして,館の運営体制の一部

手直しを行なった。それは受入(総務)一整理,一奉仕

という一貫した形にしたことである。図書館資料が受け

入れられて一般利用者に提供される過程において,図書

館の組織のうえで何れの係にもその持分を保有させよう

とする意から,従来整理部門で行なってきた受入れ事務

を総務係へその一部を移管したことである。また図書館

の受付業務がとかく秩序が乱れるということで,担当係

を明確にして,利用者によっておこる混乱を除いたこと

である。

2 組   織

 現在の県立図書館の組織は次の図のとおりであるが,

組織図

今日の図書館を運営していくには更に充実した組織体制

を整えることが必要である。これは第一に,今日の県立

図書館事業内容が,量的にも質的にも非常に幅ひろくな

って,外部からは想像もできないほど複雑化し高度化し

てきていることである。したがって能率的な運営を期す

るためには,組織上の責任体制を整える必要に迫られて

きたこと。第2には,専門的事務を担当する職員(司

書)の給与体系が他の教育機関と比して不利な条件とな

っているので,これが解決のためには教育職給料表に準

じた給与の体系とするか,また職員の職の格付を改める

必要が考えられること。第3には司書は専門的業務を担

当する関係から,他の機関との人事交流が極めて少な

く,したがって同一箇所に永年勤務を余儀なくされてい

る者が非常に多いため,勤務の意欲醸成をはかるという

観点からも組織上の司書の位置づけを確立する必要があ

る。以上の3点がその主なる理由といえる。このような

図書館組織上の一部欠陥から図書館運営に支障が生じて

いるとすれば,これは大きな問題であり,その解決をは

かることは極めて当然なことであって,昭和38年度第1

回図書館協議会(8月8日開催)においてこの問題を採

り上げ今日の県立図書館組織機構に沿った課制の設置に

つき下記の資料を提出し各協議会委員の意見を聴いた次

第である。

     ―福島県立図書館協議会提出資料―

 1 県立図書館に課制を必要とする理由

 第一,敗戦前及び敗戦直後の県立図書館と今日の

県立図書館とは,非常に違ってしまったからです。ことばを

換えて申しますと,時代が非常に違ってしまったから,

と申すことができます。つまり,時代が図書館に要求す

るところが必然的に大きく変ってしまったから,と申す

ことができます。このことをやや具体的に申上げます

と,敗戦前及び敗戦直後の県立図書館は,人数も館長以

下5,6名であって,その経営も極めて幼稚であり,当

時の占領軍から再三再四にわたって注意を受けたような

実情でした。その後,図書館法(昭和25年)施行に伴な

い,単に県立図書館のみならず,市町村の図書館も充実

してまいりました。まず県内の市町村立図書館から申上


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

Copyright (C) 2000-2001 Fukushima Prefectural Board of Education All rights reserved.
掲載情報の著作権は福島県教育委員会に帰属します。